ラズパイのカメラモジュールにエッジAI版が登場? ソニーセミコンが少数出資:人工知能ニュース
ソニーセミコンダクターソリューションズは、小型ボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズパイ)」を展開する英国Raspberry Pi財団に対して少数持分出資を行うことで合意したと発表した。
ソニーセミコンダクターソリューションズ(以下、SSS)は2023年4月12日、小型ボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズパイ)」を展開する英国Raspberry Pi財団に対して少数持分出資を行うことで合意したと発表した。両社の関係を強固にするとともに、ラズパイのユーザーコミュニティーに対して、SSSのインテリジェントビジョンセンサー「IMX500/IMX501」などを用いるエッジAI(人工知能)センシングプラットフォーム「AITRIOS(アイトリオス)」の提供を目指していく狙いがある。
安価な小型ボードコンピュータとして世界中で広く利用されているラズパイは、ソニーグループと深い関係にある。Raspberry Pi財団 CEOのエベン・アプトン(Eben Upton)氏によれば「両社は長期にわたる重要な戦略パートナーだ。製造委託からイメージセンサーおよびその他の半導体製品の取引に至るまで関係性を構築している」という。
例えば、2016年4月発売のラズパイ向け2代目カメラモジュール「Raspberry Pi Camera Module v2」はSSSの800万画素CMOSセンサー「IMX219」を搭載している。2020年5月には1230万画素の裏面照射型CMOSセンサー「IMX477」を採用する高品質カメラモジュール「Raspberry Pi High Quality Camera」を、2023年3月には全画素を同時に露光するグローバルシャッター方式を採用したCMOSイメージセンサー「IMX296」を用いた「Raspberry Pi Global Shutter Camera」を発表するなど、これまでもラズパイではSSS製のCMOSセンサーが活用されてきた。
今回のSSSによるRaspberry Pi財団への少数持分出資は、2021年10月に発表したエッジAIセンシングプラットフォームであるAITRIOSの展開を加速させる狙いがある。
AITRIOSについては実証実験関連の発表があるものの、本格的な採用という意味では事業の急速な立ち上げには至っていない状況だ。AITRIOSの開発者向けWebサイトにある「購入可能なデバイス」は、LUCID SENSAiZの「SZP123S-001」だけで、Wi-Fiカメラや屋外用カメラなどはまだTBD(未定)の状態である。

AITRIOSの開発者向けWebサイトにある「購入可能なデバイス」。LUCID SENSAiZの「SZP123S-001」しかない[クリックでWebサイトへ] 出所:ソニーセミコンダクターソリューションズ
今後、SSSとRaspberry Pi財団の協業が進展すれば、ラズパイのカメラモジュールとしてIMX500/IMX501を搭載したカメラモジュールが登場するとともに、AITRIOSと連携したエッジAIカメラアプリケーションの開発を容易にするツールなどが登場する可能性がある。
またSSSは、マルチGNSS測位機能やハイレゾリューションオーディオなどを特徴とするArduino互換の小型マイコンボード「SPRESENSE」も展開している。ラズパイのエコシステムにSPRESENSEがつながることで、AITRIOSにとどまらない新たな展開も可能になるかもしれない。
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