IIJの法人モバイル契約数が300万回線に、IoT市場勝ち残りの分岐点は「対応力」製造業IoT

インターネットイニシアティブ(IIJ)は、2024年12月末時点でIoT向け回線を中心とする法人モバイルの契約回線数が300万に到達したと発表した。

» 2025年02月20日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は2025年2月18日、東京都内で会見を開き、2024年12月末時点でIoT(モノのインターネット)向け回線を中心とする法人モバイルの契約回線数が300万に到達したと発表した。

 同社の法人モバイル契約回線数は、2022年度末の181万から2023年度末には50万回線以上伸ばして235万となっていた。2024年度は、3四半期が経過した2024年12月末時点で前年度を上回る65万回線の増加となり300万回線に到達した。2024年度の1年間で100万回線増も視野に入っている。IIJ MVNO事業部 副事業部長の中村真一郎氏は「IoT回線の市場で最も数が出るのは電力メーターのテレメトリーのような用途であり、そこではMVNO事業者は通信キャリアにコスト面で太刀打ちできない。しかし、それ以外のMVNO事業者として狙う市場については、かなりいいポジションにあると感じている」と語る。

IIJの法人モバイル回線数の推移 IIJの法人モバイル回線数の推移[クリックで拡大] 出所:IIJ

 中村氏は、IoT向けモバイルサービスの需要が旺盛な要因を3つ挙げた。1つ目は、さまざまな業界でIoT化が進展していることだ。モジュール/センサーの小型化と低価格が進み、これまでIoT化を断念していた業界が再チャレンジするケースが増えている。また、監視カメラとGPS関連はIoT利用の2大ジャンルとなっており、引き続き需要が旺盛としている。なお、IoTモジュールの小型化と低価格への対応では、IIJが加入者管理機能を自ら運用しSIMの発行や認証を自由に行えるフルMVNOとなったことにより提供可能になっているチップSIMの採用が増加していることに加え、モデム機能を内蔵したマイコンにSIMをソフトウェアとして組み込むSoftSIM対応モジュールを提供するための準備も進めている。

IoTの小型化と低価格への対応 IoTの小型化と低価格への対応[クリックで拡大] 出所:IIJ

 2つ目は、1つの現場に多数のIoT向けSIMが利用されるようになっていることだ。例えば、タクシーの場合、カーナビやドライブレコーダーだけでなく、配車システム、タクシー無線など各システムが別個にIoT化することで高密度化が進んでいる。

1つの現場に多数のIoT向けSIMが利用される事例 1つの現場に多数のIoT向けSIMが利用される事例[クリックで拡大] 出所:IIJ

 3つ目は異業種連携のツールとしてのモバイルへの対応だ。IoTを利用したエコシステムの拡張が進む中で、既存のシステムのIoT化が必要になった場合などに従来とは異なるニーズが出てきており、このニーズに柔軟に対応できることが重要になっているのだ。「IIJは、顧客のニーズに合わせてIoTのサービスを提供することをミッションに掲げているが、最近はIoTのエコシステムの広がりに合わせて、当初の要望からさらに異なるニーズも出てくるようになっている。こういった新たなニーズに対応していくことが、IIJが勝ち残っていく上での分岐点になるのではないか」(中村氏)という。

今後のIoT市場では「ちょっと違うニーズ」への対応が必要になってくる 今後のIoT市場では「ちょっと違うニーズ」への対応が必要になってくる[クリックで拡大] 出所:IIJ

 なお、こういった対応力の強化に向けた事例となるのが、IoT機器向けeSIMの新規格「SGP.32」の実証実験だ。SGP.32では、スマートフォンで広く利用されているコンシューマeSIMについて、デバイスを直接操作せずにリモートでeSIMの操作が行える仕組みを導入することで操作画面のないIoT機器でも利用できるようになる。SGP.32を活用することで、通信キャリアを自由に切り替えることが可能になるなど、さまざまな可能性が広がるという。会見では、サーバ側で通信プロファイルの変更を設定しておくと、IoT機器側からの定期的なポーリングがキーになり、SGP.32によってSIMカード内の通信プロファイルをKDDIからNTTドコモに書き換えられるというデモを披露した。

SGP.32の活用例 SGP.32の活用例[クリックで拡大] 出所:IIJ

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