セル単位の生産性に貢献するデバイスを、安川電機の2022年:FAインタビュー(2/3 ページ)
世界的な工場の自動化ニーズの高まりから、コロナ禍後の業績が好転しているのが安川電機だ。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に現在の状況と、2022年の方向性について話を聞いた。
2022年前半はサプライチェーンの混乱は続く
MONOist 市場の引き合いは好調ですが、サプライチェーンの問題は不透明感が残るということですね。
小笠原氏 根本的な解決は、部品在庫を無限に抱えるということしかないが、それは不可能だ。今の環境はとにかく、先が読めない状況で、平常時では3カ月分の在庫を適正だとしていても、1カ月半でなくなるようなことも頻繁に起こっている。どれだけ在庫を抱えれば適正なのかも読めない状況だといえる。また、調達価格がどうしても上がってくるため、ある程度は製品価格に転嫁して回収する動きもあるが、全て回収するのは難しい。そのあたりも運営の難しさにつながっている。
とにかくできることは、予想しながらある程度在庫を増やして持ち、市場の環境変化に柔軟に対応していくしかない。そのために調整をサプライヤーおよび顧客とも緊密に行っていく。また、製品開発面では、新しい部品の採用を増やし、さらに共通化を進めていく。少量の古い部品だと調達が難しいが、新しい部品を大量に発注できれば、調達交渉がやりやすいという面がある。個々に目新しい手はないが、これらを組み合わせながら粛々と進めるしかない。
MONOist 今後こうした混乱はどこまで続くと見ていますか。
小笠原氏 今回の動きで問題なのは、出口が見えないということだ。今までの部品不足はスマートフォン端末やPC端末など、用途が限られており、これらの市場動向を見ていれば出口が見えた。しかし、今回は半導体では自動車向けなどが注目されているが、生産能力が不足しているほど作られているかというとそうではなく、どういう要因が重なり合って現在の状況に陥っているのか分からない。そのため、何が解決すれば調達環境が正常化するのかが読めないのが苦しいところだ。
もう1つ懸念があるとすると、どのように平常化が進むのかという点がある。現在はモノが足りない状況が極まっており、あらゆる企業が在庫を増やす動きを示している他、多重発注や過剰発注が相次いでいる。一種のバブル的な動きが出ている。市場が平常化する中で緩やかに戻ってくる場合は問題ないが、一気に価格下落などが起きれば、さらに市場が混乱することになる。そのあたりの動きは注視している。
2022年度上期(2022年3〜9月)は基本的には今の状況が続くと見ており、後半に失速したとしても受注残などで2022年度後半も業績的には問題ない。ただ、何か動きが起きれば、2023年度(2024年2月期)以降の業績には影響が出る可能性はある。変化を見極めながら柔軟に対応していく。
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