セル単位の生産性に貢献するデバイスを、安川電機の2022年:FAインタビュー(3/3 ページ)
世界的な工場の自動化ニーズの高まりから、コロナ禍後の業績が好転しているのが安川電機だ。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に現在の状況と、2022年の方向性について話を聞いた。
スマート工場化の浸透とその中で重視するもの
MONOist 安川電機では2017年からi3-Mechatronicsとして、スマート工場化を見据えたソリューションコンセプトを打ち出しています。この浸透についてはどう考えていますか。
小笠原氏 一気に浸透が進んでいるというわけではないが、自動化という大きな動きの中で粛々と進んでいるという手応えだ。浸透に向けては、社内でもさまざまな体制を構築してきた。営業部門も従来は製品単体を売る役割だったが、顧客の課題に対してソリューションとして組み合わせて提案できるように、さまざまな製品を取り扱えるようにした。また、製品開発もソリューション視点で横断的に行えるように「安川テクノロジーセンタ(YTC)」を開設した。そういう意味で、顧客工場の課題解決をベースに考えるという姿勢は、社内外で着実に広がってきている。
ただ、こうした取り組みを進める一方で、これらに最適なデバイスを提供するというのが安川電機の役割だ。ここ数年はこうしたコンセプトを普及させるためにソリューションについて積極的にメッセージ発信をしてきたが、われわれのビジネスの中心は、あくまでもサーボモーターやインバーター、ロボットなどの製品の販売だ。2021年度の社長方針では、振り過ぎた方向性を1つ戻すようなメッセージも出した。
工場のセルの範囲内の高度化を目指す
MONOist あくまでもデバイス販売中心だということでしょうか。
小笠原氏 安川電機の得意分野は、工場の中のさらに1つのモノづくり工程を担うセルの単位で現場作業の動き(モーション)そのものであったり、これらを制御したりするデバイスだ。その範囲の中でAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、データ活用なども含めて、より効率的に便利になるような性能や機能を拡張していく。
また、こうした現場作業に関わるデータはどこまでつなげばよいのかは業界などでも統一することが難しく千差万別だ。データのみのビジネスなども大きく注目されているが、安川電機としてはリモート診断などは行うが、コンサルティングやデータ専門のビジネスに踏み出すつもりはない。統一化が可能な生産ラインや工場単位でのデータ活用についても、セルレベルを中心と考えているため、主戦場ではないと考えている。これらにうまくつながり、データを送り込むデバイスとしての機能は追加していくものの、対象領域を大きく広げることはない。
逆に言えば、工場のセル単位の領域でも技術進化によりまだまだやるべきことが残されている。センサー技術やデジタル認識技術などが進んだことで、セル単位でもモノづくりのさまざまな変化が生まれている。こうした変化を先のビジョンを描きながら先取りし、これらに最適な形で生かせるデバイスに落とし込み、付加価値を生み出していくことを重視している。
2022年は生産財業界はおおむね良い年に
MONOist あらためて2022年の見通しについて教えてください。
小笠原氏 2022年は基本的には良い年になると考えている。COVID-19の対応についても世界的にも慣れてきており、予測できない事態はそれほどは起こらないと見ている。夏くらいまでは部品不足の状況は続くと見ているが、それぞれにさまざまな手を打ちながら受注に応えていく。2023年以降についてはまだ読めない状況だが、自動化ニーズは高い状況が続いており、大きな変化がない限りは、当面は悪い状況にはならないだろう。
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