「人中心の自動化工場」を描く安川電機、物理面と制御面の柔軟性がカギ:日本モノづくりワールド(1/2 ページ)
日本ものづくりワールドの特別講演として、安川電機 取締役 常務執行役員 ロボット事業部長の小川昌寛氏が登壇。「ロボットの進化とデータドリブンによる自律分散型のモノづくりの実現 」をテーマに、生産現場で創出されるデータの活用によるソリューション技術の広がりや、デジタルツインの構造化によるさらなる進化について紹介した。
日本ものづくりワールド(2021年2月3〜5日、千葉県・幕張メッセ)の特別講演として、安川電機 取締役 常務執行役員 ロボット事業部長の小川昌寛氏が登壇。「ロボットの進化とデータドリブンによる自律分散型のモノづくりの実現 〜i3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)具現化加速に向けた次なるアクション」をテーマに、“データドリブンによる自律分散型のモノづくり”に向けた同社の取り組みを中心に、生産現場で創出されるデータの活用によるソリューション技術の広がりや、デジタルツインの構造化によるさらなる進化について紹介した。本稿ではその内容をお伝えする。
人間を中心とした自動化工場を目指す安川電機
安川電機は2020年に創業105周年を迎えた制御機器や産業用ロボットの大手メーカーである。1980年ごろからメカトロニクス分野に力を注いできた。なおメカトロニクスという言葉は同社が1969年に作ったメカニカルとエレクトロニクスを合わせた造語である。
1970年に同社では工場の自動化を図り、理想のモータ製造工場「アンマンドファクトリ」(Unmanned Factory)というコンセプトを描いた。「この工場をノーマンファクトリと呼ばなかったのは、無人だが無機質な自動化ではなく、自動化・機械化は進めるが人間の理解ができる、人間を中心とした自動化工場でありたいという構想があったからだ」と小川氏は強調する。40年前に同社が持った考えは現在も継承されており、しかもインダストリー4.0で表される製造業におけるオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指す昨今の技術的コンセプトに近いものがあると小川氏は指摘する。
同社はロボットに関しては1970年ごろから取り組みを開始し、1977年にメカトロニクス製品として象徴的な産業用ロボットを製品化した。その後現在に至るまで「何に使い、パフォーマンスを発揮するのか」など、アプリケーションを追求した取り組みを推進し、高性能、多彩さ、柔軟性などを実現してきた。産業用ロボット導入先の分野別構成比は自動車産業が50%以上だが、最近ではバイオメディカルなどの新分野にも広がっている。
ただ、アプリケーションは現場のソリューションの一部であることから、今後はソリューションとしてものごとを考えていく必要がある。ソリューションを重要視するのは、世の中の変化として多品種少量、変量制(モノや量が変動する)への対応が課題となったためだ。そこでは、従来の少品種大量生産に適合した自動化とは異なる、新たな自動化の姿が必要となる。そこで、この新たな自動化を実現する手段の1つとして人協働ロボットが登場した。
人協働ロボットの特徴は、人と協働していくことから安全性を確保する機能が搭載され、それによりセーフティフェンスが必要なくなったところにある。柵がなくなることでフレキシビリティが高まり、ロバスト性が向上した。固定化された生産設備を必要としないということは、産業用ロボットの導入において、大きなブレークスルーとなった。変量でしかも多品種であることは、製造現場の環境の変化を伴う。しかし、ロボットが柵内に固定化されず、ロボットが移動しながら稼働することでロボットはより実用的になり、活用領域は大きく拡大することにつながった。さらにアプリケーションにより適用性をさらに追究していくことで、ロボット活用はより広がることになる。
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