安川電機が考える人協働ロボットの課題と可能性:協働ロボット(1/2 ページ)
安川電機の人協働ロボット「MOTOMAN-HC10」は市場投入後1年を経過した。その手応えを開発担当者に聞いた。
安川電機は2017年6月に同社で初の人協働ロボット(Collaborative Robot)「MOTOMAN-HC10」を市場投入した。協働ロボットは用途の創出など市場開拓が進む領域だが、安川電機ではどういう感触を得ているのだろうか。発売後1年の手応えについて、協働ロボットを担当する安川電機 ロボット事業部 ロボット技術部 開発技術部 人協働技術課 課長補佐の西邑孝史氏に話を聞いた。
安全柵なしでティーチング機能も簡単に
安川電機の「MOTOMAN-HC10」は、国際規格ISO10218-1に準拠していることから、安全柵の設置が不要であり、人とロボットの協働によるモノづくりを実現できることが特徴の人協働ロボットである。
安全機能として、外部からあらかじめ設定した制限値を超える力を検出すると自動で停止する「人協働モード」を備えている他、アーム同士を離すことで隙間を確保する「挟み込み防止」構造とした。ねじ締め作業や組み立て作業、小物部品の仕分けや整列、箱詰め、ピッキング、搬送、検査、測定などの用途で使用できるとしている。
発売後の手応えについて西邑氏は「ほぼ計画通りに販売できている。日本だけでなく、欧州や米国からの引き合いも大きい」と語る。ただ、現状では本格導入という形ではない。「順調に導入は進んでいるが、現在はどういう用途で活用できるのかを検証するフェーズだといえる。導入企業でも生産技術部門などがどういう使い方がふさわしいのか評価をする用途が多い」(西邑氏)とする。
安川電機の協働ロボットの特徴として西邑氏は「まずは可搬質量がある一定レベルあること」と述べる。協働ロボット「MOTOMAN-HC10」の可搬質量は10kgで、現在市場投入されている多くの協働ロボットよりも可搬質量が大きい。ある程度大きな可搬質量を持ちながら、人と一緒に働けることが特徴で、人の作業の一部を支援するだけでなく、まさに人の作業の置き換えや、作業を割り当てながら協力して働くことを想定したものである。
西邑氏は「協働ロボットの利点は人の作業空間で人の作業をそのまま置き換えられるという点だと考えている。そのためにはある程度の可搬質量も必要になる。最初からそういう想定で開発した」と述べている。
ロボット導入の課題であるティーチング問題
協働ロボット導入の2大障壁の1つが用途開発だとすると、もう1つはティーチング(動作のプログラミング)問題になるだろう。従来の産業用ロボットは基本的には工場のライン内で同一作業を高速、高精度で繰り返すものだ。そのため専門技術者がプログラミングを毎回しても、その後は動かさないためにある程度、作業負担も吸収できる仕組みとなっている。
しかし、協働ロボットは人の作業などに合わせて、作業内容が頻繁に変わるような使われ方が想定される。そういう環境で毎回専門技術者を付けるわけにはいかず、できる限り現場で実作業する作業員がそのままティーチングできることが望ましい。そのためにはティーチングの簡略化が大きなカギを握る。
「MOTOMAN-HC10」でもこの課題に取り組むべく、ロボットアームを直接手で自由に操作し任意の動作を教示できる「ダイレクトティーチング機能」を備える。さらに、2018年4月には「スマートペンダント」を発売した。これは、タブレットでのインタフェースで簡単に動作を選択するだけでティーチングができるというものだ。「スマートペンダントは『はじめてでも操作できる』と好評だ。ただ、開発者としても簡単にロボットが使えるようにするインタフェースの問題は課題として認識しており、さらなる改善を進めていく」と西邑氏は語る。
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