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ホンダがインドで電動三輪タクシー、エンジン車より安く、走行距離は気にならない電気自動車(1/2 ページ)

ホンダは2021年10月29日、2022年前半からインドで電動三輪タクシー(リキシャ)向けにバッテリーシェアリングサービスを開始すると発表した。

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 ホンダは2021年10月29日、2022年前半からインドで電動三輪タクシー(リキシャ)向けにバッテリーシェアリングサービスを開始すると発表した。

 シェアリングするのは、「Benly e:(ベンリー イー)」などの電動バイクで使用する着脱式の可搬バッテリー「Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」だ。ホンダは現地で新会社を設立し、バッテリーの利用料金やバッテリーの状態を管理するクラウドサービスなどを収益とする事業を開始する。


ホンダ ライフクリエーション事業本部 本部長の加藤稔氏。手に持っているのがMobile Power Pack e:[クリックで拡大]

 インドでは800万台のリキシャがタクシーとして走っており、年間60万〜70万台の新車市場がある。足元では電動リキシャの普及は2万台程度だが、大気汚染対策や排出削減のため、CNG(圧縮天然ガス)車から電動車への置き換えが進むと見込む。

 電動リキシャは現地メーカーと協力して生産する。モバイルパワーパックや、その充電とユーザーへの貸し出しを管理するバッテリー交換ステーション「Mobile Power Pack Exchanger e:(モバイルパワーパックエクスチェンジャー イー)」もインド生産となる。モバイルパワーパックエクスチェンジャーの設置に当たっては、現地のガソリンスタンド運営企業とも連携する。

互換性を持ったまま性能向上するモバイルパワーパック

 ホンダは2017年に、発電量が不安定な再生可能エネルギーの電力を効率的に使えるようにするモバイルパワーパックのコンセプトを発表。大型の蓄電池ではなく、持ち運べる小さなサイズの蓄電池と複数の小さな蓄電池を充電するステーションという構成にすることで、小規模な再エネ発電を電動モビリティの駆動用バッテリーや家庭の電源で地産地消することを目指した。

 1カ所で発電した電力を分け合いやすくなるという特徴を生かした実証実験もトヨタ自動車と実施している。

 モバイルパワーパックは現在、容量を拡大した第2世代がリース販売されている。第1世代と互換性を持たせているため、既存の電動バイクに第2世代のモバイルパワーパックを搭載して走ることができる。モバイルパワーパックの電池セルは、規格サイズの円筒形を採用している。円筒形の電池セルは各社の競争でエネルギー密度が今後も向上する見通しで、同じサイズのセルで互換性を保ったまま性能をアップしやすいとしている。

 第2世代のモバイルパワーパックは、外形寸法や定格電圧はそのままで、容量は25%増の1314Whに、重量は6%軽量化して10.3kgとした。容量アップにより、電動バイクは走行距離が1.2倍拡大できる(GYRO CANOPY e:の場合)。

 電動バイクの交換用バッテリーは、メーカーを超えた相互利用に向けた標準化が進められている。日本では、ホンダとカワサキモータース、スズキ、ヤマハ発動機の4社で、欧州ではホンダとヤマハ発動機、オーストリアのKTM、イタリアのピアッジオの4社でコンソーシアムを立ち上げた。

 日本ではすでに共通仕様の一部がJASO規格として発行されており、第2世代のモバイルパワーパックも国内4社で合意したサイズや電圧を採用している。

3カ国で合計100万kmの走行実績

 モバイルパワーパックを駆動用バッテリーとして使用する電動バイクは複数車種が展開され、日本では日本郵政で導入されるなどの実績があるが、バッテリーを交換しながら走ることに主眼を置いた活用はアジア各国が中心だ。フィリピンでは環境省の補助事業としてロンブロン島に電動バイク50台を導入するとともに、夜間の電力需要減少に伴う風力発電の出力抑制を解消することを目指した実証実験を実施した。

 インドネシアでは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業で、市街地のバンドン市やデンパサール市で電動バイクなど300台を対象にバッテリーシェアリングを実施。小規模な水力発電で自給自足する山村部のタングシジャヤでは、持ち運べる電源としてのメリットを確認した。

 インドでも実証実験を実施した。ムンバイから20kmほど離れたターネーという街で30台の電動リキシャを走らせ、三輪タクシーのドライバーとバッテリーシェアリングのユーザビリティを確認した。電動リキシャは4カ月間で合計20万kmを走行したという。


電動リキシャ。モバイルパワーパックを4個搭載して走る[クリックで拡大]

 フィリピンやインドネシアでの実証実験も含めると、モバイルパワーパックを搭載したモビリティの走行距離は合計で100万kmに上る。気温の高さなど厳しい使用環境となる地域での実証実験を通じて、モバイルパワーパックの性能や耐久性、交換のユーザビリティ、バッテリーの管理、バッテリーを交換するステーションの立地などを検証した。

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