ホンダがインドで電動三輪タクシー、エンジン車より安く、走行距離は気にならない:電気自動車(2/2 ページ)
ホンダは2021年10月29日、2022年前半からインドで電動三輪タクシー(リキシャ)向けにバッテリーシェアリングサービスを開始すると発表した。
電動リキシャは「走行距離を気にせず使える」
電動リキシャには4つのモバイルパワーパックを搭載しており、実証実験では走行可能な距離は40km程度だった。
ホンダ ライフクリエーション事業本部 新事業推進部 Honda Mobile Power Pack事業統括 シニアチーフエンジニアの中島芳浩氏は電動リキシャの走行距離について「30kmだとだめ、50kmならもっといいというわけではなく、駅や新興住宅地、商業施設など人が乗り降りする頻度の高い場所にバッテリー交換ステーションを設置できるかどうかがカギだ。リキシャでの移動距離は1回の乗車で2〜3km、長くても5kmほどだった。出発点と目的地にバッテリー交換ステーションがあれば、ドライバーはバッテリー残量と走行できる距離を気にせず使える」と述べた。
インドネシアで一般のバイクユーザーを対象に実証実験を実施した際は、実証実験の参加者から協力を得て位置情報を収集しながら交通流を分析し、バッテリー交換ステーションの最適な立地を検討した。
今回、電動リキシャとバッテリーシェアリングの事業化に踏み切れたのは、バッテリーの価格を除いた車両価格が内燃機関のリキシャよりも安く抑えることができ、燃料代やメンテナンスといったランニングコストで内燃機関車とEVが同等となる見通しが立ったためだ。
バッテリーを他の電動モビリティとシェアして稼働率を高めるだけでなく、2次利用、3次利用まで用途を変えながら再利用できれば、さらにバッテリーのコストダウンにつなげられるとホンダは見込む。
具体的には、モビリティとして利用できるEOL(End Of Line)までは、バイクを含む電動モビリティや除雪機、船外機など交換式バッテリーに対応した製品で活用する。交換式のバッテリーを採用することで、除雪機など季節によって稼働率に偏りのある製品も電動化しやすい。
その後は定置用もしくは屋外で使用する電源として、電池の機能を保証できるEOLまで利用する。現在、インドネシアやフィリピンの実証実験で使用したモバイルパワーパックを回収し、中古バッテリーとしての使用テストを行っている。
交換式バッテリーに対応したモビリティは他社製品や異業種にも拡大したい考えだ。現在はコマツや楽天と開発中で、コマツはマイクロショベルの電動化で協力しており、楽天には自動配送ロボットの車台部分を提供している。
バッテリーのリユースに向けた下準備
中古のバッテリーを長く再利用するには、劣化や使い方など品質が安定していることが望ましい。ホンダの実証実験では、料金体系によって交換頻度や充電率(SOC、State Of Charge)をコントロールできる可能性が明らかになった。
SOCに関係なく1回交換するごとに料金が発生する場合はSOCが0に近づくまで使われる傾向だったが、使用した電池のSOCによって使用料金を決定する従量課金制は返却時のSOCはバラバラだった。このように料金体系によって電池にとってハードな使い方を抑制すれば、2次利用の時点でのモバイルパワーパックの品質を安定させられると見込んでいる。
中古のバッテリーの品質を安定させるには、どのように使われたかを把握するバッテリーマネジメントシステムも重要だ。四輪車であればさまざまな機能に向けて通信機器が搭載されるためバッテリーの状態をクラウド管理する仕組みを作りやすいが、リキシャやバイクのように安価なモビリティは通信機器のコストを上乗せするのが難しい。
そこで、モバイルパワーパック側にバッテリーマネジメントシステムを搭載し、充電で戻されたときに交換ステーションのモバイルパワーパックエクスチェンジャーからクラウドに使用状況をアップロードする仕組みとした。モバイルパワーパックに電圧や電流の制御、放電停止機能、セルの状態推定や不具合の判断、セルの常時監視といった機能を持たせるとともに、過放電や過充電などのアラートを記録するための大容量メモリを搭載した。
そうした「知能化」機能の一方で、インドの高い気温や粉じんの多さに対応してIP65の防水防塵試験、電池セルの電熱シミュレーションによる温度対策、振動試験、落下試験など頑丈さも確保した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ホンダに3車種目の電動バイク、交換式の新型バッテリーで走行距離1.2倍
ホンダは2021年10月28日、ビジネス向けの電動三輪スクーター「GYRO CANOPY e:(ジャイロキャノピー イー)」を同月29日に発売すると発表した。 - 電動スクーターを“普通に”使えるように、台湾二輪車メーカーはインフラ計画も描く
日本では現在、クルマの世界ではハイブリッド車の存在感が増し、少しずつ電動化の流れが強まってきていることを実感している人は多いはず。しかし2輪では、台湾が日本のはるか先を行く。そんな思いを抱かせる新型スクーターが登場した。 - カワサキが二輪やオフロード四輪を電動化、大型バイクはEVより水素エンジンが有力
川崎重工のモーターサイクルとエンジンの事業を承継したカワサキモータースは2021年10月6日、事業方針説明会を開いた。新会社はカーボンニュートラルの実現、急成長するオフロード四輪車への対応に加えて、ブランド力や商品力の向上など持続的な成長に向けた取り組みを強化する。 - 課題山積の二輪車の電動化、ホンダはどう取り組むのか
「人とくるまのテクノロジー展2021オンライン」では、電動化に関するさまざまな提案が行われた。同時開催の新車開発講演でも、ホンダが「電動二輪車の普及に向けた取り組み」を紹介。 - 燃費が良好な二輪車にも電動化は必要か、日本の電池のサプライチェーンの課題は
国土交通省と経済産業省は2021年4月16日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第3回の会合を開催した。同検討会は、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を電動車のみとするなどの目標が盛り込まれた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けて、自動車分野での取り組みを検討している。毎回、関係する業界からヒアリングを行っており、今回は日本中古自動車販売協会連合会、日本自動車輸入組合、全国オートバイ協同組合連合会、全国レンタカー協会、日本物流団体連合会、日本自動車連盟、電池サプライチェーン協議会が出席した。 - ホンダ「PCX」に電動モデル、既存のボディーに電動パワーユニットを収めEV化
ホンダは2018年11月29日、電動バイク「PCX ELECTRIC(エレクトリック)」のリース販売を開始すると発表した。原付2種のスクーター「PCX」をベースに、新開発の電動パワーユニットを搭載した。バッテリーは、着脱可能なリチウムイオン電池「モバイルパワーパック」を使用する。 - ホンダと楽天が自動配送ロボットの走行実証実験、全長約500mを自動走行
本田技術研究所と楽天グループは、自動配送ロボットの走行実証実験を開始した。自動配送機能を内蔵しており、筑波大学構内の宿舎周辺や一部公道の全長約500mを自動走行する。