カワサキが二輪やオフロード四輪を電動化、大型バイクはEVより水素エンジンが有力:電気自動車
川崎重工のモーターサイクルとエンジンの事業を承継したカワサキモータースは2021年10月6日、事業方針説明会を開いた。新会社はカーボンニュートラルの実現、急成長するオフロード四輪車への対応に加えて、ブランド力や商品力の向上など持続的な成長に向けた取り組みを強化する。
川崎重工のモーターサイクルとエンジンの事業を承継したカワサキモータースは2021年10月6日、事業方針説明会を開いた。新会社はカーボンニュートラルの実現、急成長するオフロード四輪車への対応に加えて、ブランド力や商品力の向上など持続的な成長に向けた取り組みを強化する。2030年には売上高1兆円(2021年度の業績見通しから約2.4倍)、営業利益率8%以上(同1.9ポイント以上の増加)を目指す。
カワサキモータースは、分社化によって向上した経営の自由度を生かし、消費者の変化に素早く対応できる、柔軟でアジャイル(機敏)な組織体制を構築する。ポストコロナを見据えたライフスタイルの提案など、顧客に密着した製品やサービスの提供に注力していく。
新会社での取り組みの柱の1つとなるカーボンニュートラルに関しては、電動化を推進する。2035年までに先進国市場向けの主要モデルをEV(電気自動車)もしくはHEV(ハイブリッド車)とする。同年に電動化を完了するため、2025年までに10機種以上の電動車を導入する。オフロード四輪車も同様にEVとHEVを開発し、2025年までに5機種を導入する。
モーターサイクルのHEVは、エンジンのみ、モーターのみ、モーターがエンジンの駆動力をアシストする3パターンの走行モードを搭載する。モーターのみでの走行モードは、エンジン車の進入規制がある都市部での走行を想定したものだ。
大型モーターサイクルは重量の面でEV化が難しいため、水素などカーボンニュートラルな燃料の活用にも取り組む。水素エンジンはガソリンエンジンと比べて重量が大きく変わらないため、大型モーターサイクルのカーボンニュートラル化に貢献すると見込む。
販売面では、「五感で楽しむ」をコンセプトにした店舗づくりやライフスタイルの提案を強化する。また、Webサイトの閲覧数やメールマガジンの登録数、来店数、見積もり数、成約数など数値面を重視したCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)に取り組む。モーターサイクル全体では、2025年までに電動車を含めて年平均16機種の新モデルを導入する。「Z900RS」など伝統のあるモデルも今後展開を続ける。
商品力の向上に向けては、コネクテッド技術、AI(人工知能)、ADAS(運転支援システム)など先進技術を取り入れる他、デザインや商品企画にも力を入れる。開発工程では、デジタルツインやシミュレーション技術を活用する。
コネクテッド関連は現在、スマートフォンアプリが車両情報と連携する「第1世代」を提供しているが、2021年以降に向けてスマートフォンだけでなくクラウドとも連携する「第2世代」のアプリを展開する。電動化と合わせてコネクテッド技術を高度化し、顧客体験の向上につなげる。
オフロード四輪車の生産能力増強で300億円投資
他社との協業や提携も活用する。2019年にはイタリアの老舗二輪車メーカーBimotaに出資。オフロード四輪車は台湾のKYMCO(キムコ)の開発、生産リソースを活用する。
オフロード四輪車の市場規模は、北米では2030年に向けて2019年比3倍近くに拡大する予測で、カワサキモータースとしては最も期待を寄せる分野だ。米国工場とメキシコ工場に5年間で総額300億円を投資。2025年までに電動車含めて年平均8機種の新モデルを投入できるよう生産体制を強化する。米国工場は2023年3月までに生産能力を増強、メキシコ工場は2023年度から生産を開始する。
川崎重工グループのシナジーを生かした「コングロマリットプレミアム」にも取り組む。具体的な商品領域としては、ドローン用エンジン、精密機械やロボット、物流向けのモビリティ、ライダーやドライバーの支援、災害時向けの緊急車両、電動三輪自転車などが挙がっている。ロボティクス技術と四輪バギーの走破性を組み合わせた配送用ロボットの開発も進めている。時速10kmでの走行、障害物や人の回避、対象者への追従などの機能を備える。
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