燃費が良好な二輪車にも電動化は必要か、日本の電池のサプライチェーンの課題は:カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会(3)(1/2 ページ)
国土交通省と経済産業省は2021年4月16日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第3回の会合を開催した。同検討会は、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を電動車のみとするなどの目標が盛り込まれた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けて、自動車分野での取り組みを検討している。毎回、関係する業界からヒアリングを行っており、今回は日本中古自動車販売協会連合会、日本自動車輸入組合、全国オートバイ協同組合連合会、全国レンタカー協会、日本物流団体連合会、日本自動車連盟、電池サプライチェーン協議会が出席した。
国土交通省と経済産業省は2021年4月16日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第3回の会合を開催した。同検討会は、2030年代半ばまでに乗用車の新車販売を電動車のみとするなどの目標が盛り込まれた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けて、自動車分野での取り組みを検討している。毎回、関係する業界からヒアリングを行っており、今回は日本中古自動車販売協会連合会、日本自動車輸入組合、全国オートバイ協同組合連合会、全国レンタカー協会、日本物流団体連合会、日本自動車連盟、電池サプライチェーン協議会が出席した。
電池サプライチェーン協議会
2021年4月1日に発足した電池サプライチェーン協議会は、材料を含めた電池の課題を説明した。同協議会は自動車メーカーや材料メーカー、バッテリーセルメーカー、商社など55社が参加しており、会員企業からも課題をヒアリングしている。
電動車市場の拡大は加速しており、2035年には市場規模が2019年比7〜8倍に成長すると予測する調査会社もある。電池の市場規模はさらに大きく成長し、数十倍に拡大すると見込んでいる。ただ、その中で国内の電池部材メーカーはグローバルでのシェアが下落傾向にある。正極活物質は2016年から2019年にかけて横ばいだが、負極活物質や電解液、セパレーターはシェアを落としている。
日本の電池サプライチェーンは、材料の採掘や加工、部材の製造、電池製造まで各段階でさまざまな課題を抱えていると訴えた。例えば、正極活物質の炭酸リチウムやコバルト、ニッケル、負極活物質の天然黒鉛、電解液に使用する炭酸リチウムや蛍石は生産国が偏在しており、将来を見据えた囲い込みも強まっている。炭酸リチウムは、電動車の販売拡大と中国での炭酸リチウム生産減少を受けて高騰。影響は中国国外にも波及している。コバルトは中国の硫酸コバルトメーカーによって先物買いが活発だ。電解液の六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)は中国に生産拠点が集中している。生産能力に対して需要が多く、供給がタイトな状況だ。売り控えも発生している。
電池の増産における投資の負担の大きさも課題だ。EVの販売台数が伸びるにつれて、電池の材料、製造ともに投資額が大きく膨らむ。年間300万台のEV向けに電池を日本で生産するには電池産業全体で4兆円を超える投資が必要となる見通しだ。民間企業だけで負担するのは難しく、欧米中と比べて政府の支援が少ないことによって、日本の電池の競争力が相対的に低下する可能性もあると指摘した。また、EVの国内需要が見通しにくいことも投資のネックとなっていると訴えた。
海外と比べた電気料金の高さもネックだ。日本は非化石燃料による発電のコストが特に高く、北欧や中国と比較すると製造時の電気代に大きく差がつくという。電気料金としては、日本は北欧や中国と比べてEV1台あたり3万円増と試算している。電源のCO2排出量だけでなく、電力単価の高さも国際競争力低下の一因であると指摘した。
これに対し、欧米中の各地域では、電池の材料調達から自動車での搭載、リユース、リサイクルまでのサプライチェーンに手厚い支援が行われている。金額にすると、中国では電池メーカー1社が年間1000億円近い補助を受けると推算される。EUでは2030年までに「欧州グリーンディール」で120兆円を投資。EU内のテスラ工場も1260億円以上の補助金を受けている。米国も、電池を含めて環境や関連するインフラに200兆円を投じる計画だ。日本国内と比べて各地域とも「桁違い」であると訴えた。
バッテリーに関連した規制により、欧州ではリサイクル材料の使用比率や、CO2排出量でも数値目標が設定されつつある。電池サプライチェーン協議会はこうした課題の解決に向けて、政策の提言、規制やルールづくりに取り組んでいく。
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