「攻殻機動隊の世界」を実現する、夢と英知の現在地(2/3 ページ)
産学一体で“攻殻機動隊の世界の実現”を目指すプロジェクト「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」が、各地で開催してきたコンテストの最優秀賞を選出した。2029年のテクノロジーはどこまで“リアル”となったのか。
横浜市大の小島研究室は、再生生物学研究室として三次元組織の作成につながる要素技術の開発などを研究テーマとしてきた。研究室を率いる小島伸彦准教授は、高校時代に攻殻機動隊のマンガを読んだ際、「義体」において内分泌系やリンパ系、肝臓などの機械化は難しいことを作者自身がコメントしていたのをみて、「それを実現したい」という動機から進学先を選んだという。
研究と思索の結果、細胞をベースに人工臓器を開発することで実現できるのではないかと考えたそうだ。人工臓器の開発は、攻殻機動隊の世界を実現するだけでなく、現実世界にも適用できる技術として研究を進めている。プレゼンターのNTTドコモ・ベンチャーズの秋元信行副社長は、「義体を実現しようとすると必要になる技術で、その期待感が(審査員の)評価につながったのではないか」と分析する。
今回、小島研究室では「人工肝臓」として「アルコールの代謝」に絞った形で出展。細胞を培養して人工肝臓を形成する際に「流路」を持たせることで、従来の人工肝臓の2倍の効率化を実現。これによって小型化を図れるとしており、肝臓を切除した際の一時的な補助としてなど、実際の医療でも活用できると話す。IPS細胞による人工臓器の可能性もあるが、それに比べて「より低コスト」である点も特徴だという。
秋元副社長は「攻殻機動隊の世界を実現するには、それまでに幾つかのフェーズがあり、それぞれビジネスとして成立しながらホップ・ステップ・ジャンプで攻殻機動隊の世界が実現するのだろう」と指摘し、長期的な研究開発だけでなく、短期的にビジネスとして成立させることも必要だと話す。
小島研究室の作品は「アルコール代謝に機能を絞った人口肝臓」として出展されており、これだけでも実医療への活用を期待できるが、人工臓器の効率化や小型化、生産コストの抑制など、再生医療への中長期的な貢献も期待できる。秋元氏は「短期的な課題解決はもちろん、再生医療への中長期的な貢献も期待でき、それが攻殻機動隊の世界の実現”にもつながる」と評価した。
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