「攻殻機動隊の世界」を実現する、夢と英知の現在地(1/3 ページ)
産学一体で“攻殻機動隊の世界の実現”を目指すプロジェクト「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」が、各地で開催してきたコンテストの最優秀賞を選出した。2029年のテクノロジーはどこまで“リアル”となったのか。
マンガやアニメで人気の「攻殻機動隊」の世界観を現実で再現することを目指したプロジェクト「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」が2016年2月11日に、これまで各地で開催されてきた技術開発の最優秀作品を選出する「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT the AWARD」を実施。「攻殻×コンテスト」「攻殻×ハッカソン」それぞれの最優秀作品が決定された。
攻殻機動隊の世界には「義体」「電脳空間」「光学迷彩」など、さまざまな近未来テクノロジーが登場する。こうした攻殻機動隊の世界に登場する技術を実現するためにさまざまなアイデアを持ち寄り、しかも現実的な形で具体化に取り組むというのが、今回のプロジェクトの特徴だ。
今回行われたアワードは2015年10月から11月にかけて東京、神戸、福岡において開催された「義体(ロボット、ハードウェア)」「電脳(人工知能、ネットワーク、ソフトウェア)」「都市(交通、エネルギー)」の各大会から選出された10チームの作品を展示し、そこから最優秀作品を選ぶというもの。テーマとしては個人を対象とした「攻殻×ハッカソン」、チーム・団体向けの「攻殻×コンテスト」があり、それぞれ最優秀作品が選ばれている。
3都市で行われた大会では合計で500人を超える応募があり、1次選考を通過した31チームが競いあい、「義体」がテーマの東京大会「コンテスト」ではアイ・ティー・ケー(ITK)の人間型ロボットハンド「ハンドロイド」が優勝。同「ハッカソン」では筑波大学の4人で構成されたShiftによる「身体防御スーツ(Cyber Protection Suit)」が優勝した。
「電脳」がテーマの神戸大会ではドローンなどを使った救急救命システムの「Project Hecatoncheir」が優勝。ハッカソン優勝が五感による電脳空間へのフルダイブ実現を目指す「フルダイバー」。「都市」がテーマの福岡大会では、2029年の自然について言及した「東京大学大学院農学生命科学研究附属 生態調和農学機構/Kisvin Science」がコンテスト優勝となった(「ハッカソン」については該当なし)。このほかに優秀賞などを得たチームらが出展し、全体としての最優秀作品を選出するのが今回のアワードだ。
「防御スーツ」と「マイクロ臓器」
各大会の優秀作品の中から「ハッカソン」の最優秀作品として選出されたのは、SHIFTの「身体防御スーツ(Cyber Protection Suit)」。そして「コンテスト」の最優秀作品は、東京大会で優秀賞だった横浜市立大学 小島伸彦研究室チームの「臓器設計工学に基づいた高機能化マイクロ臓器の開発」となった。
身体防御スーツは人が装着するボディースーツで、筋肉のこわばりや緊張を電気信号で認識して自動でスーツ内に空気を送り込み、それが膨らむことで衝撃を吸収する。一般的に、「人工筋肉」は発揮する力の強さに注目されがちだが、SHIFTでは「硬さと柔らかさに着目した」という。
普段は柔らかいが、力を込めると硬くなるという筋肉の特性を再現するように、空気を入れなければ自由に動き、注入すると硬くなって身を守れるようにした。文字通り「攻撃に対する防御」に焦点を当てている点が特徴で、スーツの素材を工夫することで刃物や弾丸といった攻撃から身を守れるようになる、としている。
学生有志によるプロジェクトのため現時点での実用化は見えておらず、素材も自転車のチューブを使っているなど、荒削りな点は否めないが、プレゼンターとして表彰したDMM.makeエヴェンジェリスト小笠原治氏は、「(ほかの作品が)攻殻機動隊の世界観を日常に溶け込ませようとする中、劇中に入ってもおかしくない取り組みをしていてワクワクした」とコメント。今後も継続した研究開発を続けていくことに期待した。
SHIFTは既に特許出願済みで、警備会社や自衛隊といった「防御」が必要な企業にもアピールすることで、事業化も視野に入れていきたいとしている。リーダーの白石僚一郎氏は、「平成生まれの4人のチーム」と若さをアピールして受賞の喜びを語っていた。
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