FPGAで世界No.1を目指すアルテラ、エッジ向け新製品「Agilex 3」の受注を開始組み込み開発ニュース

アルテラ(Altera)は、「embedded world 2025」に出展する組み込み機器向けソリューションについて発表した。

» 2025年03月12日 06時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 アルテラ(Altera)は2025年3月10日(現地時間)、「embedded world 2025」(2025年3月11〜13日、ドイツ・ニュルンベルク)に出展する組み込み機器向けソリューションについて発表した。

 かつて独立企業としてFPGA製品を展開していたアルテラだが、2015年にインテルに買収された後は同社のPSG(Programmable Solutions Group)と呼ばれる事業部門として統合されていた。しかし2024年2月、スピンアウトによって再びアルテラとして独立することを発表していた。

アルテラのサンドラ・L・リベラ氏 アルテラのサンドラ・L・リベラ氏

 アルテラ CEOのサンドラ・L・リベラ(Sandra L. Rivera)氏は「この1年間でエンドツーエンドのポートフォリオを持つ独立系FPGAサプライヤーとして道のりを重ねてきた。この新たな“アルテラ2.0”の時代に入り、使いやすく、デプロイしやすく、さまざまな規模と広範なユースケースに対応できるプログラマブルソリューションの展開を進めている。組織面でも、IT、営業、人事、サイトサービスなどの管理部門を立ち上げ、新たなFPGA製品である『Agilex』を顧客に届けられる体制を整えている。将来に向けては、自社の持つIPを徹底的に再利用することで、業界をリードするプログラマブルソリューションを投入して顧客の満足度をさらに高めていく。これによってFPGAサプライヤーとして世界No.1になりたいと考えている」と語る。

独立企業としてのアルテラの方向性 独立企業としてのアルテラの方向性[クリックで拡大] 出所:アルテラ

 アルテラが、自社の独自性として挙げるのが、エッジからクラウドまでエンドツーエンドのポートフォリオをそろえる唯一の独立系FPGAサプライヤーであることだ。かつての競合であるザイリンクスはAMDの傘下に入ったため独立系ではなく、ミッドレンジ以下が主力製品のラティス・セミコンダクターはクラウドやデータセンター向けのハイエンド製品を展開していない。ただし、アルテラ自身も1年前まではインテルのネットワークやデータセンター、AI(人工知能)などを手掛ける事業部門の傘下にあったためエッジ向けでは新製品を長らく投入できていない状況にあった。

アルテラはエッジからクラウドまでエンドツーエンドのFPGAポートフォリオをそろえる アルテラはエッジからクラウドまでエンドツーエンドのFPGAポートフォリオをそろえる[クリックで拡大] 出所:アルテラ

 embedded world 2025では、このエッジ向けの新製品となる「Agilex 3」の受注開始を発表した。Agilex 3は、FPGAファブリックにおける配線遅延の課題を解決するアーキテクチャ「Hyperflex」の第2世代を採用しており、従来品である「Cyclone V」と比べてFPGAファブリック性能を最大1.9倍に高めるとともに、消費電力を最大38%削減している。

「Agilex 3」の特徴 「Agilex 3」の特徴[クリックで拡大] 出所:アルテラ

 FPGAファブリックのロジックエレメント(LE)数は2万5000〜13万5000となっている。さらに、Armのプロセッサコア「Coretx-A55」×2コアに加え、AI処理向けTensorブロックを備えたDSPコアを搭載している。Agilex 3全体でのAI処理性能は、INT8で最大2.8TOPSに達する。

 この他、トランシーバーの帯域幅もCyclone Vの最大6.144Gbpsから約2倍の12.5Gbpsに拡大しており、PCIe 3.0を4チャネル、10Gビットイーサネットも利用できる。メモリインタフェースもLPDDR4に対応するなど、最新のエッジ向けに求められる機能を集積した。なお、製造プロセスはインテルの「Intel 7」である。

 Agilex 3はさまざまな用途で利用できる高い機能を備えているが、中でも有効とするのがスマート工場などに用いられるロボットの制御システムである。複数のセンサーからの連続的なデータストリームを並列処理でき、リアルタイム性の高い制御に加え、AIモデルを処理することもできる。同様に、自動運転車や農業用ロボット、ドローンなどにも最適だとする。

アルテラ ジャパンの社長にサム・ローガン氏が就任

アルテラ ジャパンのサム・ローガン氏 アルテラ ジャパンのサム・ローガン氏

 再び独立企業となったアルテラは、日本でも独立して事業を展開する組織としてアルテラ ジャパンを立ち上げた。アルテラ ジャパン 社長にはサム・ローガン(Sam Logan)氏が就任した。ローガン氏はアジアパシフィックジャパン アルテラ代表も務めており、日本を含めて韓国、インド、台湾、ASEAN、オーストラリア、ニュージーランドにおけるアルテラの事業責任を負っている。

 ローガン氏は、日本AMDやSpansion Japan、SiFive Japanなど海外半導体メーカーの日本法人の立ち上げや事業運営に携わってきたことで知られる。そしてFPGA関連では、アルテラと競合していたザイリンクスの日本法人の社長を務めた経験があり、日本国内でFPGAに対してどのようなニーズがあるかなどの知見も有している。

 ローガン氏は「日本市場は有線/無線のネットワーク機器、医療、産業機器、車載、民生、計測器など幅広い分野で需要があることが大きな特徴だ。今後、エッジでのAI処理性能が求められることから、Agilex 3やミッドレンジの『Agilex 5』などで対応していきたい。新たな市場成長を見せつつある防衛分野にも注力する。日本の半導体業界にも貢献したいと考えており、不足している半導体エンジニアを大学で育成するためにアルテラのFPGAを活用できればと考えている」と述べている。

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