PFASの血中濃度の基準値:PFASリスクの基礎知識(7)(2/2 ページ)

» 2026年10月30日 06時00分 公開
[永井孝志,MONOist]
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PFASの血中濃度の推移

 このように、PFASの血中濃度が20ng/mLを超えたとしても、それだけで病気になったり体調が悪くなったりするわけではない。しかしながら、メディアが「米国の学術機関が健康リスクが高まると指摘する値を超えていた」と書けば、読者は不安感を高めてしまうだろう。そして「自分の血液中PFAS濃度は大丈夫だろうか?」と不安になり、自分も血液検査を受けてみたいと考える人も出てくるだろう。血液検査によって値が低ければ安心できるというメリットもあるが、高かった場合にどうすればよいかについては判断が難しい。すなわち、血液検査には以下のような限界がある。

  • (1)血液検査ではPFASが何に由来するかが分からないので、何を減らせばPFASの曝露が減るか分からない
  • (2)体調不良などの原因がPFASなのかどうかが分からないので、そもそも曝露量を減らすべきかどうかも分からない
  • (3)追加の検査などの不必要な負荷を与え、精神的な不安も与えてしまう

 このように、実際には検査を受ける個人にとってのメリットはあまりないと考えられる。特に精神的なケアは大きな課題である。不安が高まると「献血で血を抜くことでPFASの血中濃度を下げられる」などという明らかに体への負担が大きく効果も不明なやり方に飛びつく人も出てくる可能性がある。

 ただし、あくまで集団としての曝露量を把握してリスクを評価するためには有用である。また、時系列の曝露量の推移を知ることができるのは大きなメリットである。環境省は血中PFAS濃度の長期的なモニタリングを続けており、この結果(図1)によると、一般的な日本人の血液中PFOS濃度は、2008-2010年の平均で14ng/mLであったのが、2024年には3.3ng/mLまで低下している。同様の期間にPFOA濃度も5.6ng/mLから2.2ng/mLまで低下した。PFASは「永遠の化学物質」などと呼ばれることもあるが、使用をやめればこのように血中濃度は低下するものであり、決して永遠に体内に残るわけではない。

図1. 日本におけるPFOS・PFOAの血漿中濃度の平均値(全血中濃度からの換算値) 図1. 日本におけるPFOS・PFOAの血漿中濃度の平均値(全血中濃度からの換算値)[クリックで拡大] 出所:環境省の「化学物質の人へのばく露量モニタリング調査」を基に作成


 今回はPFASの血中濃度の基準値とその根拠について解説し、超過した場合の判断についても解説した。次回はPFASのリスクがさまざまなリスクの中でどの程度の位置にあるかについて解説する。

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筆者紹介

永井孝志

リスク分析を専門とする研究者。博士(理学)。ブログ「リスクと共により良く生きるための基礎知識」を運営。著書に「基準値のからくり」や「世界は基準値でできている」。国立研究開発法人で化学物質の環境リスク評価等に従事しているが、本記事は所属機関における業務とは無関係である。


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