続・量産プロセスで、完璧な量産(組み立て)と検査ができない理由製品リコールを生む品質不良の原因と対策(7)(1/2 ページ)

設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第7回では、人間による組み立て作業や検査の限界を具体例から示すとともに、製造性に問題がある場合、設計と製造のどちらで対応すべきかを解説する。

» 2026年09月08日 08時00分 公開

 前回は「量産プロセスで、完璧な量産(組み立て)と検査ができない理由」のうち、「作業者の作業スキルが低い」に関する最後の1項目を残して解説した。今回は、その残された1項目である「人間の作業/検査の限界」と、「製造性対応方法の判断力が低い」について取り上げる。

量産プロセスにおける、完璧な量産(組み立て)と検査ができない理由と対策 図1 量産プロセスにおける、完璧な量産(組み立て)と検査ができない理由と対策[クリックで拡大]

人間の作業/検査の限界

 ここでは、筆者が関わった組み立て作業や検査の中から、作業者のスキルだけでは対応できない、人間の作業/検査能力の限界を超えた3つの実例を紹介する。

1滴の接着剤の塗布(組み立て作業が困難)

 図2のように、長さ約200mm/幅約2mmの樹脂部品に作られた溝に、ディスペンサー(決めた量の液体を出す装置)を使用して、液体の接着剤を一定間隔に1滴ずつ塗布する作業があった。防水チューブをこの溝に貼り付けるためだ。ディスペンサーは1滴だけ塗布する設定ができるので、量産前はこの作業が難しいとは誰も考えていなかった。

 しかし、量産が始まってしばらくすると、接着剤の塗布作業の後工程で防水チューブが剥離しているものが見つかった。適量の接着剤が塗布されていなかったのだ。筆者はその原因を探るため、しばらくこの塗布作業を見ることにした。

 作業者は、ディスペンサーの先端を溝から5mm程度上方の位置にして、1滴を滴下させようとしていた。しかし、腕がわずかに動いてしまい、なかなか滴下したい位置にディスペンサーの先端が定まらない。作業者は必然的にディスペンサーの先端を溝に近づけようとする。そうすると、接着剤の表面張力によって1滴が溝に引っ張られ、1滴分より少ない量しか塗布されなくなるのだ。

 この組立メーカーでは、ディスペンサーを使う作業は多くなかったため、このようなことが起こるとは誰も気付かなかった。手作業の限界を超えていた。

 最終的には、治具を用いて適切な位置に滴下できるようにしたが、そもそもできない作業を作業者に強いていたのである。製品の組み立てでは、塗布する位置や量が不安定になる接着剤の使用は避けるのが基本だ。このような製造性の問題に対しては、試作段階で組立メーカーから設計者へ接着剤以外の固定方法の検討を依頼するか、適切な位置に接着剤を滴下できる装置を準備しなければならなかった。

ディスペンサーで、1滴の塗布が困難な接着剤 図2 ディスペンサーで、1滴の塗布が困難な接着剤[クリックで拡大]

ガスケットの貼り付け(検査が困難)

 図3左のように、ガスケットを貼り付ける作業があった。図3右のように、ガスケットが板金に乗り上げるのはNGだ。しかし、ガスケットは長さ15mm程度で柔らかく、ガスケットの下面に貼ってある両面テープが最初に触れた部品にすぐ貼り付いてしまうため、手作業では扱いにくい。

 この貼り付け作業の後工程には、貼り付け位置が適切かを数秒で確認する工程内検査があったが、ガスケットと貼り付け箇所が同系色のせいか、目視での判断も難しかった。結局、NG品が後工程に流れてしまったのだ。量産開始後の最初の数台で見つかったため製品不良にはならなかったが、このときはすぐに作業改善の方法が見つけられず、「より慎重に検査する」ことで対応した。

ガスケットが板金に乗り上げているのを工程内検査で見つけられなかった 図3 ガスケットが板金に乗り上げているのを工程内検査で見つけられなかった[クリックで拡大]

 このような問題は、現在ではカメラを用いた画像検査によって対応することも可能だ。ディープラーニングを用いたAI(人工知能)検査が得意とする対象の1つである。

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