ダミヤンは単なる人形ではない。内部にマイコンと、首のひねり、圧力、姿勢などを検知するセンサーが搭載されているロボットだ。強くつかまれたり、不自然な姿勢で搬送されたりすると、その状態がデータとして送られる。操縦者は「ダミヤンインジケーター」を見ながら、どのようにつかんでいるか、首に負担がかかっていないかを確認できる。
ダミヤン本体は、2025年大会から大きな変化はない。一方で、ダミヤンとの通信、データベース、評価システムなど、裏側の仕組みは全面的に刷新されたという。
新システムでは、データ通信にIoTで広く利用されているMQTTを採用し、表示インタフェースにWebブラウザを利用できるようにした。ダミヤン側がデータを発信し、必要な情報を端末で受け取る。これによって、従来のように決まった端末に縛られずさまざまな端末を活用できるようになり、情報を確認しやすくなった。
このシステムは、将来の災害現場に応用できる可能性がある。例えば、現場で活動する複数の救助隊員がそれぞれ端末を持ち、取得した被災者や現場に関する情報をリアルタイムでオペレーションルーム(本部)に共有するといった活用法が想定される。
競技運営のために磨かれた通信技術が、実災害での情報共有につながる可能性を秘めている。
レスコンで培われた技術が社会へ出ていく事例も既に現れている。
サンリツオートメイションは、遠隔操縦用のコンピュータプラットフォームを「レスコンボード」として大会に提供してきた。カメラ映像や各種センサー情報を扱い、ロボットを遠隔操作するための基盤だ。担当者によると、参加チームからの要望や周辺技術の変化を取り込みながら改良を重ねてきたといい、「そういう意味ではここの大会で一緒に作ってきた」と振り返る。
今回の大会では、同社の渡邊彩夏氏が「高温環境に対応した監視点検用クローラロボットARTHURの消防応用」と題して特別講演を行った。
渡邊氏は2011〜2014年、愛知工業大学の「長湫ボーダーズ」の一員としてレスコンに出場していた。学生時代からクローラ型ロボットの研究を続け、2020年にサンリツオートメイションへ入社。現在は監視点検用クローラロボット「ARTHUR」の消防応用に携わっている。
消防向けロボットの開発では、消防隊員との訓練と対話を重ねたという。研究者が考える「できること」と、現場が本当に必要とする機能には差がある。そこで、消防隊員と「ロボットに何を任せるか」「どんな場面で使うか」を一緒に検討し、実運用に合わせて改良してきたそうだ。
その結果、消防隊員1人で運べる重量、高温環境への対応、ガスセンサーや通信中継機の搭載、現場到着から2分で投入できる運用性などを備えたシステムへと進化した。2025年12月に導入された豊田市消防本部では、現在も訓練で活用されているという※)。
※)サンリツオートメイション:2025年12月25日付ニュース
渡邊氏は、レスコンに出場していた頃は「人の役に立つロボットが作りたい」と考えていたという。その思いは消防プロジェクトに関わる中で「絶対に消防ロボットを作る」という目標に変わった。現在の夢は、消防車や救急車のように、消防ロボットが各消防署へ当たり前に配備されることだと力強く語った。
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