締結されたボルトの許容繰り返し荷重、2本なら単純に2倍でよいのか?冴えない機械の救いかた(8)(1/4 ページ)

本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第8回は、規定トルクで締め付けられたボルト1本構成の許容繰り返し荷重と、ボルト2本構成の場合の考え方を取り上げる。

» 2026年07月15日 07時00分 公開

 MONOistでボルトの話をするのは3回目です。今回は、設計初心者向けに全面的に書き直しました。

 前回は、締め付けられていないボルト1本構成の許容繰り返し荷重についての話でした。今回は、規定トルクで締め付けられているボルト1本構成の許容繰り返し荷重と、ボルト2本構成の場合を取り上げます。

 ねじの文献で必ず出てくる「内力係数Φ」を説明します。そして、「文献に従ってボルト1本での許容繰り返し荷重を求めた後、ボルト2本構成の部品を設計したとき、許容繰り返し荷重は必ず2倍以下となるので、単純に2倍してはならない」とショッキングなことを最後に主張します。

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規定トルクで締め付けられたボルトの疲労限度

 前回では、ねじ谷底で発生する応力集中と、締結により最初から引っ張られていることによる平均応力によって、ボルトの疲労限度は材料の疲労限度よりかなり低下すると述べました。今回は、規定トルクで締め付けられたボルトの疲労限度を求めてみましょう。

 この疲労限度はボルトの文献にも載っているので、そちらを参照してもよいと思います。文献値では、ボルトの呼び径によって疲労限度は異なります。ねじ呼び径が大きくなると疲労限度は低下しますが、ここで述べる方法では、ねじ呼び径が変わっても一定値となります。

 まず、平均応力を求めましょう。表1にボルトの締め付け管理方法を示します。ここで述べる管理方法は「トルク法締め付け」であり、トルクレンチを使用する方法です。

ボルトの状態 管理方法 工具
トルク法締め付け 弾性締め付け トルクを管理 トルクレンチ
回転角法締め付け 塑性締め付け スナグ点(ボルト軸力が効き始めた点)からの回転角を管理 回転角が測れるレンチ(市販されている)
トルク勾配法締め付け 塑性締め付け トルク勾配(単位回転角当たりのトルク変化量)を管理 専用機械
回転角とトルクを細かいサンプリングピッチで測定
表1 ボルトの締め付け管理方法

 トルク法締め付けは、締結時にボルトに発生するミゼス相当応力が、材料の降伏応力の70〜90[%]程度になるような締め付けトルクとする方法です。トルクはトルクレンチで管理します。この辺は以前のシリーズで詳しく述べました。

 ここでのミゼス相当応力は、ねじ谷底の応力集中を考えない応力です。表1の「回転角法締め付け」と「トルク勾配法締め付け」では、締結時のミゼス相当応力は降伏応力より大きい値となります。厳密には、CAE解析で弾性解析をすると降伏応力よりかなり大きな値、弾塑性解析をすると降伏応力より少しだけ大きな値(加工硬化分だけ大きな値)になります。

 トルク法締め付けでは、平均応力は降伏応力の70[%]としましょう。このような条件が成立する締め付けトルクと、ボルトが発生する軸力を求めておきます。計算シートは以前のシリーズで紹介しています。

 M10 強度区分12.9の場合の諸量を表2に示します。トルク係数は0.203[-]、締め付けトルクは78[Nm]で、ねじ山断面のミゼス相当応力は降伏応力のちょうど70[%]となっています。ボルト軸部の直径はΦ10[mm]ですが、ねじ山断面の等価的な直径(有効断面積に相当する直径)は8.701[mm]であることに注意してください。

ボルト計算シート 表2 ボルト計算シート[クリックで拡大]

 ボルト締結時のねじ山断面の平均応力は降伏応力の70[%]なので、強度区分12.9の場合の平均応力は式1となります。

式1 式1

 応力集中と平均応力によって低下したボルトの疲労強度は、表3のように65[MPa]となります。65[MPa]は今後ずっと使うので、覚えていただければ幸いです。表のσmcは片振り荷重振幅の平均値を有効断面積で割って求めた平均応力です。

応力集中と平均応力によって低下したボルトの疲労強度 表3 応力集中と平均応力によって低下したボルトの疲労強度[クリックで拡大]

内力係数Φの解釈

 ボルトの話をするには、内力係数Φを説明しておかなければなりません。いずれ「内力係数Φは使わない」と書きますが、読者の方が転職した直後に職場の先輩から「オマエ、内力係数も知らないの?」と言われないようにするため、そして、ボルト破断不具合が発生し、機械の納品先の顧客から「内力係数はいくらとして設計されたのでしょうか?」と問われたときに答えられるようにするため、過去の記事と重複しますが書いておきます。

 最初に、筆者の内力係数Φの解釈を述べます。これは、ある企業の若手機械系技術者のために3日間の機械工学セミナーを行ったとき、セミナー終了後に受講者からボルト破断の相談を受けて気づいた解釈です。相談された方には、「ここにゴムシートを挟んだのが原因で疲労破断したと思います」と述べ、その理由を説明しました。

 では、内力係数の解釈を述べます。図1は、締め付けていないボルトで被締結体を引っ張ったときの状態です。

締め付けていないボルトで被締結体を引っ張ったとき 図1 締め付けていないボルトで被締結体を引っ張ったとき[クリックで拡大]

 被締結体の間には隙間ができていて、ボルトが伸びていますね。ということは、ボルトにはひずみが発生していて、ひずみにヤング率を掛けた量がボルトに発生する応力となります。

 図2に、締め付けられているボルトで被締結体を引っ張った状態を示します。引っ張っても被締結体同士が離れないくらいに、ボルトを締め付けられているとします。ボルトの長さは被締結体の厚さで固定されているので、ボルトはほとんど伸びていませんね。つまり、ボルトに発生するひずみの増加はほぼゼロであり、荷重によってボルトに発生する応力にもほとんど変化はありません。応力振幅はゼロに近くなります。

締め付けられているボルトで被締結体を引っ張ったとき 図2 締め付けられているボルトで被締結体を引っ張ったとき[クリックで拡大]

 ボルトに発生する応力振幅はゼロだというのは少し言い過ぎであって、ボルトと被締結体は弾性変形するので、図1の状態で発生するボルトの応力変化の0.1〜0.2倍で収まるというのが筆者の解釈です。この0.1〜0.2の数値が内力係数Φです。

 被締結体間にゴムシートを挟むとボルトが伸び縮みするので、ボルトには応力変化が発生し、疲労破断につながったと考えられます。ゴムシート、要注意ですね。

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