内力係数Φを説明しておきましょう。この章は“尺稼ぎ”感がありますが、前述した理由から書いておきます。図3に示すように、ボルトがあるトルクで締結されていた場合を考えます。ボルトには軸力が発生しているので、被締結体は接触した状態を維持します。上の被締結体と下の被締結体との接触部では、何らかの力のやりとりがあります。
締結体が分離しない場合、ボルトに発生する応力振幅σaは式2で表されます。σa0は、前回で説明した「荷重振幅÷断面積」です。
式2のΦは0.1〜0.2[-]くらいの値で、内力係数Φと呼びます。では、内力係数を求めましょう。図4において、ボルトを例えば20[deg]回転して締め付けたとします。
図4左図は、ボルトが回転によってλinitだけ進んだ状態です。実際にはボルトと被締結体は干渉するのでこのようにはならず、ボルトがλbだけ伸び、被締結体がλpだけ縮んで、図4右図のようになります。
ボルトが被締結体を押す力と、被締結体がボルトを押す力は等しいので、力と変形量の関係を図5のように表すことができます。横軸が変形量で縦軸が力なので、この線の傾きはばね定数になります。
実は、被締結体のばね定数の方が圧倒的に大きく、傾きが急になるのですが、説明しやすいように傾きを緩くしてあります。図5から式3が成立します。
図6に、荷重が作用する前後の状態を示します。荷重が作用したときのボルトと被締結体の変形量(伸び量と縮み量)は等しくλとなります。ボルトと被締結体の変形量が変わったので、ボルトが上側被締結体を押す力と、下側被締結体が上側被締結体を押す力も変わります。
図6右図の状態で、上側被締結体に作用する上下方向の力のつり合い式を作りましょう。式4となります。
ここで、式3を使うとλは以下となります。
ボルトが上側被締結体を押す力は、Finit(Kbλb)からKb(λb+λ)に変わりました。この変化量Fbは式7になります。
式7に式6を代入します。
前述した力と変形量の関係を図示したものを図7に示します。ボルトの文献でよく見る図ですね。
ボルトが上側被締結体を押す力の変化量Fbに注目します。これをねじ部の有効断面積ASで割り、その半分がボルトに発生する応力振幅で、式9となります。
ボルトが締め付けられていなかったときの応力振幅は、前回の式8です。
前回の式8を式9に代入します。
式10と式2を見比べると、内力係数Φは式11となります。
ボルトが締め付けられていなかったときの応力振幅(これは「荷重振幅÷断面積」の半分です)をΦ倍したものが、ボルトが締め付けられているときの応力振幅となります。
ここで余談ですが、繰り返し荷重が作用し続けている状態を考えます。最初はボルトが締め付けられているので応力振幅は小さく、疲労破断しなかったとします。次にボルトが緩んだとしましょう。すると、ボルトに作用する応力振幅はΦ分の1倍、大体5倍となるので、条件が悪ければそのボルトは疲労破断します。ボルトの緩みと疲労破断は密接な関係があります。
内力係数Φの計算には、ボルトと被締結体のばね定数(Kb,Kp)を求める必要があります。ボルトの方は簡単ですが、被締結体の方は難しくなります。図8に、シミュレーションで被締結体のばね定数を求めた例を示します。
ボルト接触面だけが陥没していて、陥没量と陥没部の反力からばね定数を求めました。文献には、ボルトによる力が等価的な円すい領域に分散されるとして求めた計算式などが記載されていますが、図8のような挙動は、計算式に数値を代入して求められるようなものでしょうか。計算式の使用は少し無理があるように思えます。少し話がそれました。
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