温室効果ガス、マイクロプラスチックに続く環境課題として注目を集めつつある窒素廃棄物排出の管理(窒素管理)、その解決を目指す窒素循環技術の開発を概説しています。今回は、これまでに紹介してきた要素技術を社会実装につなげるために必要な化学プロセスのシステム設計と、その導入効果を定量的に示すためのライフサイクルアセスメントおよび環境影響評価について紹介します。
本連載ではこれまで、産業活動や日常生活から排出される窒素化合物が環境に及ぼす影響を整理するとともに、それらを低減/資源化するための窒素循環技術について紹介してきました。従来の環境対策では、窒素酸化物(NOx)やアンモニア性窒素といった環境中に放出される有害な窒素化合物(廃棄窒素)を最終的に窒素分子(N2)へと無害化することが主な目的でした。
しかし近年では、窒素を「廃棄すべき物質」ではなく、「循環させるべき資源」と捉え直し、回収/再利用することで環境負荷低減と資源確保を同時に実現しようとする取り組みが進んでいます。
本稿では連載第13回として、これまでに紹介してきた要素技術を社会実装につなげるために不可欠となる化学プロセスのシステム設計と、その導入効果を定量的に示すためのライフサイクルアセスメント(LCA)および環境影響評価について解説します。要素技術単体の性能評価だけでは見えにくい課題や効果も、システムとして俯瞰することで初めて明らかになります。
新規に開発された触媒や吸着材といった要素技術は、実験室レベルで高い性能を示しても、そのまま産業プロセスに適用できるとは限りません。原料ガスや廃水の組成、処理量、運転温度、エネルギー供給条件など、実際の現場では多くの制約条件が存在します。そのため、複数の要素技術をどのように組み合わせ、全体として成立するプロセスを構築するかというシステム設計が極めて重要となります。
図1は、排ガス中のNOxをアンモニアに変換するNTA(NOx to Ammonia)プロセスを対象として、システム全体のエネルギー評価を行った例です。従来技術の選択的触媒還元(SCR)法では、NOxをアンモニアと反応させて窒素ガス(N2)に還元していましたが、NTAプロセスではNOxそのものをアンモニアへと変換し、資源として回収する点が大きく異なります[参考文献1]。
ただし、今回検討した触媒の場合、酸素の存在下ではNTA反応が阻害されるため、事前にNOxと酸素を分離する工程が必要となります。この分離にはNOx選択吸着剤を用います。条件はガス性状などによって異なりますが、例えば約100℃で吸着、約300℃で脱離を行う場合を考えます。
触媒反応も同程度の温度域で進行するため、これらの工程を個別に加熱するとエネルギー消費が大きくなります。この問題に対し、工程間に熱交換器を導入して排熱を回収/再利用することで、プロセス全体として65%の省エネルギー化、CO2排出量で55%削減が可能であることを示しました。
また、システム設計ではエネルギー収支に加え、処理時間や濃度条件の整合性を考慮する必要があります。図2は、気相NTAプロセスにおいて、NOx吸着材とNTA触媒の処理能力が適切に適合しているかを評価した結果です。吸着材出口では、吸着運転中はNOがほとんど検出されず、脱離時に約15000 ppmという高濃度でNOxが放出されます。一方、それを処理した触媒出口では、大半がアンモニアへと変換されていることが確認できます。
このように、吸着工程と触媒工程の処理速度や対応濃度が適切に設計されていれば、システムとして無理なく連続運転が可能となります。要素技術を単純に直列接続するだけではなく、システム全体としての整合性を検証することが、社会実装への重要なステップです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
コーナーリンク