北極域研究船「みらいII」と“超深海探査母船”に見るJAMSTECの次世代装備船も「CASE」(2/3 ページ)

» 2026年06月25日 08時00分 公開
[長浜和也MONOist]

「よこすか」から後継船となる“超深海探査母船”へ

 現行の深海潜水調査船支援母船「よこすか」は、JAMSTECの深海探査を支えてきた船だ。最大潜航深度6500mの有人潜水調査船「しんかい6500」を調査海域まで運搬し、潜航前の事前調査や潜航中の支援を行う。深海探査機「うらしま」の支援母船としての役割も担い、調査目的に応じた海洋観測機器を搭載して単独で海洋調査も行う。

 一方で、今回の2026年度の一般公開では、1990年の完成から26年が経過したよこすかの老朽状況を具体的に訴えていた。法令に基づく検査/整備で必要な安全性を確保している一方、通常の整備では補修が追い付かない減肉や配管破孔、搭載機器の経年劣化、製造終了部品の入手難が発生しているという。例として、Aフレームクレーンの構造部材腐食、海水揚収システムの油圧配管破孔、燃料タンクの破孔/減肉、音響航法装置受波器の不具合による測位不能などを挙げている。入渠期間の増加や停泊中の整備対応もあり、約10年前と比較して年間稼働率が低下しているという。

深海潜水調査船支援母船「よこすか」の老朽化状況 深海潜水調査船支援母船「よこすか」の老朽化状況。船体、配管、クレーン、音響航法装置など、深海探査支援に関わる複数の設備で不具合例を示していた[クリックで拡大] 出所:JAMSTEC

 JAMSTECでは、よこすかの老朽化が著しいことから、超深海探査能力の維持向上のために後継船たる“超深海探査母船”の基本設計を進めるとしている。深海から採取した試料を船上へ持ち帰り、研究区画で処理・保管する運用を重視した船で、多種多様なAUV(自律型無人潜水機)搭載能力、格納庫、作業甲板、遠隔操作型無人探査機、フルデプス無人探査システム、20mピストンコアラー、ドレッジャー、グラブ採泥器、CTD採水装置などへの対応を仕様として挙げている。

超深海探査母船のタスク JAMSTECは超深海探査母船のタスクとして「深海からのサンプルリターンを主任務とする新たな研究船の建造準備」を掲げている[クリックで拡大] 出所:JAMSTEC

 研究区画についても、400m2以上のラボスペース、独立したリサーチルーム、冷蔵実験室、冷凍/冷蔵サンプル保管庫、コンテナラボを搭載し、かつ、作業甲板からの動線を最適化する予定だ。さらに、居住環境では、24時間観測や長期乗船による疲労への配慮、居室の個室化、空調区画の細分化、風呂/シャワー設備の運用柔軟性、食堂/供食能力、レクリエーション機能など、探査機を載せるプラットフォームとしての機能拡張に加えて、長期航海で得たサンプルを船上で扱う研究拠点としても最適化することを目指している。

8000m級へ改造された「うらしま8000」

 AUVは、母船とケーブルでつながらず、事前に設定した航路や深度に沿って海中を航行する無人探査機だ。海中では衛星測位の電波が届かないため、DVL(ドップラー速度計)、音響測位などを組み合わせた慣性航法で自機の位置を推定する。会場に展示されていた「うらしま8000」「しんりゅう6000」「じんべい」も、それぞれの機体で慣性航法装置、音響測位通信装置、DVL、各種ソナーを組み合わせる構成を搭載している。

 うらしま8000は、サイズ10.7×1.3×1.5m、空中重量7トン、最大潜航深度8000m、速力2.5〜3.0ノット、最大航行時間30時間という大型AUVだ。潜体前後に大きなペイロード区画を持ち、大型の調査機器も搭載可能だ。海底面近くを航行して観測するため、母船からの音響調査に比べて高精度の海底地形図を作成できる。

深海巡航探査機「うらしま8000」の実機 深海巡航探査機「うらしま8000」の実機。自律航行が可能で最大潜航深度は8000m、最大航行時間は30時間。説明スタッフによると、従来と同じ30時間の航行時間で8000mまで到達して同等の調査時間を確保するため、潜航角度を従来よりも大きくできるように船体制御プログラムを改良したという[クリックで拡大]

 もともとは1998年から深度3500m級AUVとして開発を進め、2022年から8000m級対応の改造を経て、2025年7月には伊豆・小笠原海溝で深度8015.8mに到達し、国内開発の航行型AUVとして最深となる記録を達成するとともに、海底地形と海底下構造データの取得に成功し、調査船から観測できなかった海底谷の細かな地形も把握した。

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