疲労限度線図については過去のシリーズで説明しているので、ここではポイントだけ述べます。ただし、今回は少し追加した部分もあります。
参考文献[4]は、たぶん日本で初めて発表された疲労限度に関する論文だと思います。論文の図をそのまま掲載できないので、論文に記載されている数値をグラフ化しました。これを図7に示します。
平均応力と応力振幅を変えながら疲労試験を行い、破断したか/しなかったかを記録します。そして横軸を平均応力、縦軸を応力振幅として実験結果をプロットします。破断したものは●プロット、破断しなかったものは〇プロットです。
すると、破断するか/しないかの境界は直線となります。この図を「疲労限度線図」と呼びます。
縦軸切片は平均応力がないときの疲労限度ですが、横軸切片が材料の真破断力σTと一致するところがポイントです。
真破断力について説明します。図8に引張試験片の試験前後の形状を示します。
引張試験によって試験片は伸び、破断直前にはくびれが発生します。この結果、破断面の直径は元の直径より小さくなります。
引張強さと真破断力の定義を以下に示します。
破断面の断面積は初期形状の断面積より小さいので、真破断力は引張強さよりかなり大きくなります。
設計では真破断力ではなく引張強さを横軸切片にすることが多く、これを「修正グッドマン線図」と呼びます。この他にもさまざまな疲労限度線図が提案されていて、それらを図9に示します。
設計では平均応力が与えられていて、その条件で疲労強度を求めることが多いので、平均応力σmと疲労強度σwの関係式を以下に示します(参考文献[2])。σyは降伏応力です。
ここで、高強度ボルト(強度区分12.9)を使うときの注意点を述べます。
強度区分12.9ということは、引張強さは1200[MPa]、降伏応力は1080[MPa]ですね。そして、ボルト断面の応力が降伏応力の70[%]となるように初期締結トルクを決めたとしましょう。
このとき、ボルト断面の平均応力は1080×0.7=756[MPa]です。しかし、応力集中しているため平均応力を1080[MPa]とすべきとの考え方もありますね。ここは意見が分かれます。後者を採用すると使える応力振幅はかなり小さくなってしまいます。
ちょっと疲労限度線図を描いてみましょう。図10です。
最初は修正グッドマン線図(オレンジ色のグラフ)です。横軸切片は引張強さσBですね。平均応力がないときの疲労限度を引張強さの0.35倍とすると、1200×0.35=420[MPa]です。したがって縦軸切片は420[MPa]となります。
修正グッドマン線図に従うと、ボルトを上記トルクで締め付けた場合の疲労限度は155[MPa]まで低下してしまいました。
しかし、図7で示したように、実際の材料は真破断力を横軸切片とする疲労限度線図に従います。
今度は「σT-σw線図」を使って疲労限度を求めましょう。この例では真破断力を1649[MPa]としました。
σT-σw線図に従うと、図示したように疲労限度は227[MPa]となりました。
修正グッドマン線図は広く使われていますが、真破断力を測定するとσT-σw線図を使うことができます。修正グッドマン線図を使うと、応力振幅は155[MPa]までしか使えませんでしたが、σT-σw線図を使うと227[MPa]まで使えます。
焼き入れボルト(強度区分12.9の高強度ボルトなど)では、降伏応力が引張強さの0.9倍と高くなるので、このような結果になりました。
ついでに「Soderberg線図」でも疲労限度を求めてみましょう。図11に疲労限度線図を示します。今度は使える応力振幅が126[MPa]まで低下してしまいました。
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