オムロンとオムロン サイニックエックスはDcXを活用した実証をさまざまなパートナーと進めている。AIを中核にしてビジネスを展開するアプリズムとの共同実証では、同社が提供する馬の行動や状態をAIで見守り、管理業務を支援するAIプロダクト「aiba」において、DcXを活用して多様な環境条件の違いに対して期待する性能を発揮する「馬体検出AIモデル」の開発手法の構築に成功した。
aibaでは、検出モデルにより画像内の馬体を検出し、検出枠(バウンディングボックス)で指定している。このバウンディングボックスの中心位置を馬体重心位置として推定しており、実証ではDcXの適用前後で重心位置の推定性能を比較した。検証の結果、夜間で照度が低い厩舎環境においても、他拠点で学習された知見を取り込むことで、暗所環境下でも安定して馬体を検出できるようになり、馬体重心位置の推定性能が19.00%改善したことを確認したという。
馬の行動や状態変化の監視は現場環境や対象条件など、学習時に想定していない条件変化が生じると、馬体の検出精度が低下する課題が存在していた。このような変化に対応するためには、他のオーナーが保有する馬房データや、他拠点のデータを用いた追加学習が有効である。しかし、これらのデータは秘匿性が高く、追加学習にはデータ収集やモデル開発、運用対応に加え、開発期間やコストの増大といった課題が伴っていた。
アプリズム AI プロダクト本部 プロダクト推進部 ゼネラルマネージャーの湯本章彦氏は「競馬業界は競走馬の情報や馬の生活サイクルを他に見せたくないというオーナーが多いため、馬房環境の情報を他に共有できないという課題があった。この課題に対して、DcXを活用することで、共有したくない個々のデータはそのままに、AIモデルが学習した特性を他のオーナーのAIモデルに反映可能になった」と強調する。
今回の実証を通じ、従来のAIモデル開発期間と比較して最大で75%を削減できることが判明した。また、人件費の削減やクラウドの利用期間が短縮したことにより、従来手法と比較してコストを最大で50%削減可能である。
DcXの今後の展望として、フィジカルAI領域での活用を考えている。諏訪氏は「現在世の中でいわれているフィジカルAIは、ものすごく賢いAIがロボットや自動車などにつながることである。だが、これは1つの側面でしかない。“真”のフィジカルAIは現場のロボットや自動車といったハードウェアから得ることができる、センサーデータといった1次データを活用して成長するAIのことである」とコメントする。
加えて、諏訪氏は「現在主流のLLM(大規模言語モデル)はインターネットなどを通じた言語情報(約20兆〜30兆トークン)で構築されており、ここに1次情報が組み合わさると、扱うデータの量がさらに増えることになる。このデータ全てを従来と同じようにサーバやクラウド上で管理することは物理的にも厳しくなる。この背景を踏まえて、今後は全てのデータをAIが学習して賢くなる方法から、DcXのように各ローカルモデルで少しずつ学習してもらい、これを徐々に集めて1つの大きなモデルにするという方法になるだろう」と述べている。
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