AIをモノづくりで効果的に活用するには何が必要になるのだろうか。産業用ソフトウェアを展開するAVEVA Executive Vice Presidentでプロダクトポートフォリオ戦略担当のキム・クストー氏に話を聞いた。
AI(人工知能)が当たり前のようにモノづくり業務でも活用できるようになる中、これを効果的に成果に結び付けるためには何が必要になるのだろうか。産業用ソフトウェアを展開するAVEVA Executive Vice President(EVP)でプロダクトポートフォリオ戦略担当のKim Custeau(キム・クストー)氏に話を聞いた。
MONOist AIの普及が加速する中で、日本の製造業のデジタル化の状況についてどのように見ていますか。
クストー氏 製造業においてデジタル化はこれまでも進められてきましたが、成果が得られているところとそうではないところがあります。その中でAVEVAでは、デジタル化のポイントとして「データ」「ワークフロー」「AI」の3つを位置付けています。特にデジタル化で成果を得ることを考えると、AIが大きな役割を果たし、成果までの時間を最小化する可能性があります。
ただ、AIを本格的にモノづくり業務の中で活用しようとすると、重要になるのが学習に使用できるデータの存在です。データの質や量の問題、またこれらの統合の問題があります。これらが整備できていなければ、AIから期待する効果を引き出すことはできません。
特に日本の製造業ではデータやシステムの「サイロ化(縦割り状態)」が大きな課題だと見られています。製造業では設備を数十年使用するケースもあり、その間にも新しい設備やシステムが加えられていくことから、異なる世代の設備やシステムが混在しています。そのシステムやアプリケーション、これらを運営する仕組みが組織によってバラバラで、データそのものは寄せ集めることができても、AIで使えるような形になっていません。
例えば、ある設備について工場Aで登録しているコードと工場Bで登録しているコードが異なるケースがあるとします。それらにひも付く作業内容も、それぞれ同じ作業をしていても異なる名称で登録され、実態としては同じ設備で同じ作業をしていても、システム上は異なるものとして認識されるケースが生まれています。こうした状況では、AIを活用したとしても、正しく効率化などが進められません。
さらには、工場では、3D CADデータの他、図面や指示書などを紙で印刷して、これらに手書きで注意点などを記入して活用している現場もあります。こうしたデジタル情報とアナログ情報が混在する中でも、適切にAIが理解できるようなデータとして蓄積していく必要があります。このように「AIが理解できるデータ」をどのように整備するのかがAI時代におけるモノづくりの大きな課題だと捉えています。
MONOist 「AIが理解できるデータ」とは具体的にどういうデータのことをいうのでしょうか。
クストー氏 先ほど説明したように、設備や工程、作業内容などを全社で一致させるマスターデータの整備や、作業やインシデントの発生時刻の認識を一致させるタイムラインの整備などはもちろん必要です。これらに加えて、AVEVAが重視しているのは「Industrial Context(産業的なコンテキスト)」です。
3M(Man、Machine、Material)情報やタイムラインを正確に記録できるようになっても、それらで示された事象が、それぞれの産業や企業、部門でどのような意味を持つのかは、それぞれの産業や企業への理解が必要になります。AIが本当に企業にとって役に立つ回答を示すためには、こうした「何が企業にとってうれしいのか」という情報も理解してもらう必要があります。
例えば「この数値はどの設備から取得されたのか」「その設備は工程のどこにあるのか」「他の設備とどのような関係にあるのか」「それは製品出荷にどういう影響を与えるのか」などを結び付けて理解することで、AIは産業データを適切に解釈できます。このコンテキストをどう捉えて、データを整備するのかという点も大きなポイントだといえます。
AVEVAは長年にわたり、エンジニアリングからオペレーションまで、さまざまな産業向けのソフトウェアを提供してきました。プロセス産業や製造業に関する知見を持ち、コンテキストを理解していることが、AI時代には強みとなると捉えています。
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