東京理科大学は、リチウムイオン電池の電極作製時に重要となるペースト状の電極材料(スラリー)の塗工条件を、微量試料で迅速に評価する手法を確立した。電池を組み立てる前に塗工条件を迅速に絞り込めるため、試作回数などの低減が期待できる。
東京理科大学は2026年5月13日、リチウムイオン電池の電極作製時に重要となるペースト状の電極材料(スラリー)の塗工条件を、微量試料で迅速に評価する手法を確立したと発表した。アントン・パール・ジャパンとの共同研究による成果だ。
研究では、電極生産ラインの塗工厚みを模して、500μmのギャップを設けたレオメーターにLFP(リン酸鉄リチウム)正極スラリーをセットし、「レオ・インピーダンス測定」を実施。同測定法は、塗工速度に対応する複数のせん断速度を与えつつ、電気化学インピーダンスを測定できるため、スラリーの電気的特性をその場で評価できる。
測定の結果、スラリーの電気抵抗(R_slurry)は中程度の速度で最大値を示すことが分かった。これは、正極内の導電助剤となるカーボンブラック粒子が、塗工中に速度に応じて異なる分散状態をとることを示唆する。
次に、異なる塗工速度で作製した電極を用いたコイン型電池で電極の電気抵抗(R_electrode)を測定したところ、R_slurryが最大となる塗工速度でR_electrodeが最小となる逆相関関係が示された。また、乾燥や固化後の電極で最も効率的な導電ネットワークを形成していることから、乾燥させたLFP層の断面を観察。その結果、カーボンブラックは中速で均一に分散しており、中程度の塗工速度が最適な電極構造を生み出すことが分かった。
塗工速度別に見ると、R_slurryが最大、R_electrodeが最小となる中程度の塗工速度で作製した電極が、最も優れた電池性能を示した。一方、塗工速度が低すぎる、高すぎる場合は性能が低下し、特に低速、高速条件で早期に容量劣化が生じることも確認できた。
これらの成果から、レオ・インピーダンス測定法によるスラリー評価が、乾燥後の電極構造と電池性能を事前に予測する指標として有効であると実証できた。同時に、中程度の塗工速度が、LFP正極スラリーで電池性能を高める有望な塗工条件だと分かった。
リチウムイオン電池の正極作製時には、電極を構成する各材料を溶媒に混ぜたスラリーを金属箔に均一な厚みで塗る工程が不可欠だ。塗工速度の違いが電極性能に影響することから、塗工条件の最適化が求められる。電池を実際に組み立てて充放電試験を行い、最適条件を見いだすため、時間や材料、コスト面に課題があった。
同手法は、1mL未満のスラリーを用いて1条件あたり約5分以内で塗工条件の良否を判断できる。電池を組み立てる前に塗工条件を迅速に絞り込めるため、従来の経験則や電池組み立て後の実測に依存した条件探索に比べ、試作回数、材料使用量、廃棄物の削減につながることが期待できる。
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