分割加工+溶接工法は、製品を分割して高精度に削り出し、ファイバーレーザー溶接で接合する。同工法では、溶接後の切削加工を排除するため、溶接のみで精度を完結させるプロセスを構築した。
ファイバーレーザー溶接を成功させる必須条件として分割パーツには高い「合わせ精度」が求められた。分割パーツは複雑な形状のため加工治具の設計や工程の検討も難しかった。こういった課題を解消する目的で、数値管理に加えて、切削時の異音や振動を職人の五感で捉え、加工条件をリアルタイムで微調整。さらに、難形状に対応する専用治具と加工ノウハウで要求精度をクリアした。
ファイバーレーザー溶接は、一般的な溶接に比べ、入熱量が少なくひずみを最小限にできる一方で、レーザー径が直径0.6mmと細いため、接合部への溶接では高い位置精度が要求される。増殖ブランケットは複雑な3次元構造で、突き合わせ溶接、重ね溶接、隅肉溶接などで作製した多様な継手が必要となる。そのため、ファイバーレーザーを継手に応じて正確な角度/位置で照射し続ける高度な施工技術が求められた。
菱輝金型工業の担当者は「増殖ブランケットパーツは形状の制約により、レーザー溶接機のファイバーレーザーが届かない死角が存在する。さらに、レーザー溶接機の出力、速度、ガス流量などのパラメーターが複雑に絡み合い、最適条件の導出が困難だ」と指摘した。
そこで、ファイバーレーザーで対応できない部分は、火花を飛び散らさずに、ステンレスやアルミ、鉄など、さまざまな金属の溶接が行えるアーク溶接である「不活性ガス(TIG)溶接」でカバーするハイブリッド施工を実施した。ハイブリッド施工では、100パターン以上の条件テストを繰り返し、ひずみを抑えつつ強度を担保し、要求精度2mm以内を達成した。
菱輝金型工業の担当者は「SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)の部材を5つのパーツに分けて極めて高い精度(±0.1mm以内)で削り出し、それらをレーザー溶接で組み上げるという分割加工+溶接工法を採用した。熱によるひずみが少ないファイバーレーザー溶接を用いつつ、複雑な継手形状に対して100パターンにも及ぶ条件出しを行った。最終的に高さ約1.26m、幅約0.62m、厚さ0.24mの大型部品(増殖ブランケットパーツ)を、高精度で組み上げることに成功した」とまとめた。
原氏は「愛知県は製造業の合計出荷額が国内1位で、航空宇宙産業、工作機械産業、自動車産業が国内で最も多い。しかし、AI(人工知能)の活用による仕事の変化や小型ロボットの普及なども起きている。これらの社会変化に伴い、愛知県では今後10年あるいは20年後には新しい産業が必要になってくる。それこそが核融合産業だと考えているため、核融合産業向けの部品事業を会社の柱にしていきたい」と展望を示した。
Helical Fusionの田口氏は「核融合反応時に生じる高速中性子を遮蔽(しゃへい)して装置全体を守る重要部品である『遮蔽ブランケット』と増殖ブランケットを組み合わせたブランケット全体の完成は2030年頃を予定している。今回の試作品完成により、増殖ブランケットで最も複雑な形状の部品が製造可能と証明されたため、今後は『内部に液体金属を安定して循環させる技術』や『材料同士の相性』の実証を約3年かけて行い、最終的な統合を目指す。現在は遮蔽ブランケットの試作も進行している」とコメントした。
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