さて、「A→B/C→D」と作業の流れを整理し、並列にするべき作業と、本当はサボっていても全体の生産量が変わらない現実を皆さんとワークで直視してきました。次はこれを、「PERT図(パート図)」と呼ばれる図解で理解していきたいと思います。
「PERT図」といきなり専門的に見える方法の名前を聞くと、手が止まってしまうかもしれません。ですが、この手法は誰にでもできる、DXや自動化を考える上で最も強力な武器になります。
挿絵を参照していただき、実際にPERT図を書いてみましょう。
PERT図を描く最大の目的は、「クリティカルパス(最長経路)」を見つけることです。工程A(10秒)のあと、道が2つに分かれ、
そして最後に工程D(20秒)で合流します。
この時、スタートからゴールまで一番時間がかかるルートは「1→2→3(上ルート)→4」のルートです。これをクリティカルパスと呼びます。
全体の生産時間は、このクリティカルパスの長さ(10+60+20=90秒)で決まります。「クリティカルパス上にない工程(余裕がある工程)をいくら改善しても、全体の時間は1秒も縮まらない」ということです。
「見かけの稼働率」への執着のことの繰り返しになりますが、もし皆さんが、「C機(40秒)」を2000万円する最新の高速機(20秒)に買い替えたらどうなるでしょうか? Cの工程は速くなりますが、全体の時間は「B機(60秒)」が支配しているので、90秒のまま変わりません。2000万円の投資効果は、生産量においては「ゼロ」です。
逆に、「B機」の工程を1秒でも縮めれば、それはダイレクトに全体の生産量アップにつながります。
改善を進めると、B機が40秒以下になった時点で、今度はC機や人の作業が新たなクリティカルパスとして浮上してきます。このように、ボトルネック(クリティカルパス)は改善するたびに移動します。
1つの制約を取り払うと、次の制約が見えてくる。これを繰り返すことで、理論原単位(物理的な限界)に近づいていくのです。
ここでようやく、IoT(モノのインターネット)やDXツールの出番です。
PERT図を描こうとしても、「あれ? B工程の正確な時間って何秒だっけ?」と分からないことがあります。あるいは、「人によってバラつきがある」こともあります。DXツールは、ただ漫然と稼働率を見るためではなく、この「PERT図の矢印ごとの正確な実績値」を取得するために導入するのです。測定するためのテクニックの基礎などは、前回の記事をご覧ください。
「クリティカルパスはどこか?」「余裕工程はどれくらいあるか?」これをデータに基づいて精緻に描くことができれば、無駄な投資を避け、本当に必要な「ボトルネック」だけにリソースを集中させることができます。
今回、「工程の並び替え」と「PERT図によるボトルネック特定」というテーマでお話しさせていただきました。
最後に、読者の皆さんにぜひ実践していただきたいアクションプランを提示します。
これを行うだけで、設備投資ゼロで「生産量4割増」は決して夢物語ではありません。新しい機械のカタログを見る前に、まずは今の現場の「時間の使い方」を因数分解し、PERT図で再構築する。その泥臭いプロセスこそが、本質的なDXへの近道なのです。
さて、ここまで2回にわたり、製造/物流現場の「直接部門(モノを作る/運ぶ現場)」におけるIEとDXについてお話ししてきました。
「うちは工場じゃないから関係ない」「事務作業がメインだから」。そう思われている方もいるかもしれません。しかし、IEの思考法は、デスクワークや間接業務にこそ、すさまじい威力を発揮します。承認フローの停滞、重複した入力作業、形骸化した会議……これらは全て、工場における「在庫」や「チョコ停」と同じです。
次回のテーマは、「現場だけではない!間接業務におけるIE思考と、ノーコードツールを味方につけた高速改善文化の醸成」です。
Excel職人が属人化させた業務をどう解きほぐすか? プログラミングのできない現場担当者が、自らの手で業務アプリを作り、カイゼンを加速させる未来とは? 次回も、リアルな失敗談と成功のヒント満載でお届けします。お楽しみに。
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