IEの基本動作に「同時進行」と「動作の入れ替え」があります。今回の条件にある「BとCは同時進行可能」という点がポイントになります。では、実際に工程を組み替えてみましょう。
この時の「全体のサイクルタイム」は何秒になるでしょうか?
人の動き:10秒(工程A)+20秒(工程D)=計30秒となり、機械の動き:60秒(工程B)と40秒(工程C)は、人の作業の合間や同時進行で処理されます。もし、1個流し(One Piece Flow)で、B機とC機へのセット/取り出しの移動ロスを無視して理想形を描くとこうなります。
入れ替えを実施した場合のサイクルタイム計算は以下の通りです。
10秒(工程A)+60秒(B機・C機同時稼働・ボトルネックはBの60秒)+20秒(工程D)=90秒
いかがでしょうか。パターン(1)の「130秒」から、パターン(2)の「90秒」へ。40秒、率にして約30%の短縮です。
新しい機械を買いましたか?いいえ。作業員を増やしましたか?いいえ。ただ、「B機が動いている間にC機を動かす」「順番を変えて並列にする」という手順の変更を行っただけです。これだけで、生産量は1.4倍以上に跳ね上がります。
「うちはこんな単純な工程じゃない」
そう思われる方もいるでしょう。しかし、原理は全く同じです。複雑な工程であっても、分解していけば、必ず「機械が動いているのに人がぼーっとしている時間」や「同時にできるのに直列にやっている作業」が存在します。
「とっくにそのくらいのカイゼンは実施している!」
本当にそうでしょうか? この疑問に回答する方法が、理論原単位との比較です。
パターン(1)にあった、「作業者は、機械が動いている60秒間、エラーが起きないか心配なので機械の前で腕組みをして待っています。あるいは、次の準備もせずにぼーっと眺めています」は、大なり小なり、どこの製造現場においても発生している現実をこれまで見てきました。
理屈で言えば当たり前の「並列化」ですが、実際の現場ではなぜか「直列(A→B→C→D)」で行われていることが驚くほど多いのです。なぜでしょうか? ここにIE/DX以前の根深い問題があります。
熟練工ではないパートタイマーや、多能工化されていない作業者の場合、「機械が動いている間はその場で見守っていないと不安」という心理が働きます。また、過去に一度でも機械トラブルで停止した経験があると、「監視」が業務として正当化されてしまいます。
しかし、正常に動いている機械を見ているだけの時間は、付加価値ゼロです。これは「仕事」ではなく「待機」です。
トヨタ生産方式などで「1個流し」が良いとされていますが、それを「1個の製品が最後まで完成するまで、次の製品に着手してはいけない」と誤解しているケースがあります。
本来の1個流しは「仕掛品(在庫)を溜めない」という意味であり、「手待ち時間を作っていい」という意味ではありません。
ここが最も厄介な点です。工程を並列化すると、B機(60秒)が動いている間、C機(40秒)は先に終わってしまい、20秒間止まることになります。これを見た現場監督者が、「おい、C機が止まっているぞ!もったいないからもっと回せ!」と指示を出してしまうのです。
これこそが「部分最適のワナ」です。全体のボトルネックはB機(60秒)なので、C機がそれより速く動いても、仕掛品(在庫)の山ができるだけです。
「C機は20秒休んでいていい」。この判断ができるかどうかが、マネジメントの分かれ道です。全員が忙しく働いている(機械も人もフル稼働している)現場が良い現場ではありません。
「ボトルネック以外は、サボっていても全体の生産量は変わらない」。この事実を直視することが、IE的思考の第一歩です。
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