鉄鋼材料の組織鉄鋼材料の基礎知識(7)(2/3 ページ)

» 2026年02月18日 07時00分 公開
[ひろMONOist]

鉄鋼材料の標準組織

 鉄鋼材料が組成ごとにどのような組織を形成するかは、「平衡状態図(へいこうじょうたいず)」から読み取ることができます。平衡状態図とは、ある種の合金において成分が混ざり合い、時間が経過してそれ以上反応が起こらない平衡な状態となったとき、どのような組織となるかを示した図のことです。

 図7にFe−C系平衡状態図を示します。鋼や鋳鉄の標準組織を議論するさいに用いられており、横軸は炭素濃度を、縦軸は温度を示します。実線部はFe−Fe3C系の平衡状態図を示し、点線部はFe−黒鉛系の平衡状態図を示しています。基本的に実線部を見れば大丈夫です。

図7 Fe−C系平衡状態図[参考文献5] 図7 Fe−C系平衡状態図[参考文献5][クリックで拡大]

 平衡状態図の中で「液相(L)」の領域は、その合金が溶融していることを示しています。それ以外の領域は固相であり、炭素濃度や温度によって「オーステナイト(γ)」や「フェライト(α)」などの固相になることが分かります。「〇+△」と表示されている領域は、〇と△の混合相(二相)になることを示しています。

 固相はそれぞれ、結晶構造や持っている性質が異なります。各相の特徴は次の通りです。

各相の特徴

  • フェライト(α)

 フェライトは低温域で作られる鉄の相であり、体心立方晶(b.c.c.)の結晶構造を持つ。炭素を最大で0.02%固溶(こよう)できる。軟らかく、延性に富んだ性質を有している。常温の純鉄では、組織が100%フェライトとなる。

  • オーステナイト(γ)

 オーステナイトは高温域で作られる鉄の相であり、面心立方晶(f.c.c)の結晶構造を持つ。純鉄の場合、912℃から1394℃までの温度範囲でオーステナイトとなる。炭素を最大で2.14%まで固溶(こよう:結晶構造中に溶けて混ざり合うこと)することができる。パーライトや後述するマルテンサイトなどへの相変態に関わっている重要な相である。

  • セメンタイト(θ)

 セメンタイトは鉄と炭素の化合物(Fe3C)であり、斜方晶の結晶構造を持つ。炭素濃度0.02%以上の鋼では、727℃以下になると現れる。ただし炭素濃度が0.76%より高くなると、727℃以上でセメンタイトが現れるようになる。セメンタイトは非常に硬くて脆いが、工具鋼や軸受鋼などでは必要不可欠な組織である。

  • パーライト

 パーライトは、フェライトとセメンタイトの薄い層が交互に重なってできた組織である。真珠(パール)に似た光沢があることから、パーライトと呼ばれている。粘り強い性質を持つことから、鉄鋼材料の基本組織として広く利用されている。フェライトとセメンタイトの層の間隔は「ラメラー間隔」と呼ばれ、ラメラー間隔が狭いほど強靭な鋼となる。

  • デルタフェライト(δ)

 デルタフェライトは高温域で作られる鉄の相であり、体心立方晶(b.c.c)の結晶構造をもつ。純鉄では1394℃から融点(1538℃)までの温度範囲でデルタフェライトとなる。炭素を0.07%固溶できる。

平衡状態図の使い方

 平衡状態図の使い方は、ターゲットとしている炭素濃度のところで縦線を1本ひき、その線をたどって組織を確認します。

 例として、炭素濃度0.45%の鋼の組織について見てみます。機械構造用鋼材の一種である「S45C」は、この炭素濃度を持つことで知られています。1000℃以上の組織はあまり重要ではないため、1000℃以下の部分を拡大した平衡状態図を図8に示します。

図8 Fe−C系平衡状態図の拡大図 図8 Fe−C系平衡状態図の拡大図[クリックで拡大]

 炭素濃度0.45%の鋼は、900℃ではオーステナイト組織となります。オーステナイトは先述した通り、炭素を多く固溶している鉄の相です。そこから温度が下がってA3線の温度に到達すると、オーステナイト中にフェライトが析出(せきしゅつ:固相から新たな固相が生じること)します。組織はフェライト+オーステナイトの二相組織となります。

 さらに温度が下がってA1線の温度(727℃)に到達すると、未変態だったオーステナイトがパーライトに変態し、フェライト+パーライトの混合組織となります。これが炭素濃度0.45%の鋼の最終的な組織となります。

 なお、平衡状態図上のS地点は「共析点(きょうせきてん)」といい、オーステナイトからフェライトとセメンタイトが同時に析出する地点となります。共析点上の鋼(炭素濃度0.76%)は「共析鋼(きょうせきこう)」と呼ばれ、組織は100%パーライトとなります。共析鋼は非常に硬く、なおかつ粘り強さがあるため、鉄道のレールやピアノ線などに用いられています。

 共析点よりも炭素濃度が低い鋼は「亜共析鋼(あきょうせきこう)」と呼ばれ、フェライト+パーライトの混合組織となります。フェライトの延性とパーライトの硬い性質を併せ持つため、延性と強度を兼ね備えた鋼となります。パーライトの量は炭素濃度に応じて増加し、材料の硬さと強度も増加します。

 共析点よりも炭素濃度が高い鋼は「過共析鋼(かきょうせきこう)」と呼ばれ、組織はパーライト+セメンタイトの混合組織となります。過共析鋼は非常に硬いため、工具や軸受などに用いられています。

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