ソフトウェアデファインドオートメーションを支える制御プログラム構築技術製造業ソフトウェアデファインドの潮流(2)(4/4 ページ)

» 2026年02月03日 06時00分 公開
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SDA推進に向けた取り組みの現状

 これらの課題を解決してSDAを実現するために、制御システムユーザー、制御機器ベンダー、クラウドプロバイダーやソフトウェアベンダー、エッジデバイスベンダーなどが自社独自、また、業界内でのアライアンスを組成して推進している。ここでは、業界内横断的な取り組み、コンセプトを中心に紹介する。

UniversalAutomation.org(UAO)

 産業オートメーションの分野で、オープンで標準化された制御システムの普及を目指すコンソーシアム(非営利団体)である。主に、分散型制御システムへの移行を促進し、異なるベンダーのシステム間での相互運用性を高めることを目的とし、IEC 61499規格に基づいたオープンな制御ソリューションを推進している。

 2021年11月の設立以降、シュナイダーエレクトリックやフエニックスコンタクト、オムロンや横河電機などの制御機器ベンダーだけでなく、エクソンモービルやABインベブ、BASFなどのユーザー企業、大学/研究機関やソフトウェアベンダーなど現在は約120社が参加している。

 UAOでは、オープンなエコシステムを構築して共同で技術開発や標準化を進め、相互運用性の向上を図っており、IEC 61499規格の普及に向けて、イベント駆動型の制御ロジックや、分散型アーキテクチャを可能にする機能を提供するとともに、制御ロジックが異なるデバイスやプラットフォームで動作可能なオープンランタイム環境(Open Runtime)を開発している。

Margo

 margoは、産業用エッジ(Industrial Edge)領域における相互運用性(interoperability)を実現することを目的に設立されたオープンソースソフトウェアイニシアチブ(OSS Initiative)であり、2024年5月、Linux Foundation傘下のLF Edgeプロジェクトとして発表された。

 産業用エッジの世界において、多数のベンダーの独自仕様機器やソフトウェアが混在する中で「つながりやすさ」「データのやりとりのしやすさ」を標準化/簡素化することを目指している。

  • 相互運用性の確保:異なるベンダーの産業用エッジデバイスやソフトウェアが、共通のプロトコルやAPIを通じて連携できるようにする
  • オープンソース:コードや仕様を公開し、誰でも参加、利用、改良できるようにすることで、広範なコミュニティーによる協力を促進
  • 標準化推進:エッジコンピューティングに関するベストプラクティスやレファレンスアーキテクチャを提供し、産業界での標準化を目指す
  • セキュリティ/拡張性:産業用途に求められるセキュリティ/拡張性/耐障害性なども重視

 ABBやエマソン、シーメンス、シュナイダーエレクトリック、ロックウェル・オートメーションといった欧米の制御機器メーカーの他、インテル、マイクロソフト、レッドハットといったソフトウェアベンダーが幹事企業として加わり、オープンコミュニティーによる標準化を進めている。

Unified Name Space(UNS)

 UNSは、前述の2つの取り組みのような標準規格に即した活動や具体的なイニシアチブ、プロジェクトではないが、製造業において、各所で発生するデータを組織内で柔軟かつ有効に活用するためのコンセプトとして近年注目を浴びている。UNSでは、大きく以下の3つの役割から構成される。

  • データプロバイダー:PLCやセンサーなどデータを生成し自らUNSにデータを公開する
  • データ消費者:AIモデル、ダッシュボード、分析ツールなど、UNSからデータを取得し、分析や意思決定に活用する
  • ブローカー(データハブ):データプロバイダーから送られてきた情報を受け取り、必要なデータ消費者に配信

 この中では特にブローカーが中心的な役割を果たす。ブローカーの主要な役割は以下となる

  • データの収集:データプロバイダーから送られる情報を受信し、多様なデバイスやシステムからのデータを統一的に管理。異なるベンダーやプロトコル(例:MQTT、OPC UA)を統合し、相互運用性を確保する
  • データの整理と階層化:製造業の組織全体でデータや情報の利活用を促進するために、工場/ライン/機械/センサーのような統一された階層構造で管理
  • データの配信:データプロバイダーがブローカーにデータを「公開(Publish)」し、データ消費者が必要なデータを「購読(Subscribe)」するという、パブリッシュ/サブスクライブ(Pub/Sub)モデルを使用して、データを効率的に配信する。必要なデータのみをリアルタイムで配信し、通信負荷を低減させるとともに、消費者は興味のあるデータにのみアクセス可能とする

 これらのコンセプトに基づいて、ソフトウェアベンダーがUNSに基づくデータマネジメントソリューションを提供している。その中では、以下のような機能も提供し利便性を高めている。

  • データのフィルタリングと変換:データ消費者の要求に応じて必要な情報のみを提供したり、データを変換(例: 単位変更、フォーマット変換)して提供したりすることで、データの利用効率向上、消費者が必要な情報を迅速に取得可能となる
  • リアルタイム性の維持:機械の稼働状況やセンサーのデータをリアルタイムで配信し、異常検知やプロセス改善に活用するなど、データをリアルタイムで受信・配信し、製造プロセスのモニタリングや制御を可能にする
  • スケーラビリティのサポート:データモデルや通信プロトコル(MQTT等)の柔軟性により、大規模なシステムでも効率的に対応となるため、新しいラインや機械を追加しても、ブローカーがデータの流通を管理するため、システム全体の変更が最小限で済む
  • セキュリティとアクセス管理:データの送受信における認証や暗号化を提供し、セキュリティを確保したり、データ消費者ごとにアクセス権を設定し、必要なデータへのアクセスを制限したりする

 次回は、SDAをさらに拡張した、ソフトウェアデファインドマニュファクチャリング(Software Defined Manufacturing、SDM)について考察する。

著者紹介

芳賀 圭吾

合同会社デロイト トーマツ パートナー

重工業、産業機械、建機/農機製造業を中心に、20年以上にわたって製造業向けコンサルティングに従事。事業戦略、ビジネスモデル策定から、設計開発・営業・サプライチェーン・サービスのオペレーション変革実行に至るまで幅広く支援している。

近年はデジタルを活用した事業構造変革に注力。スマートファクトリーイニシアチブのリードも務める。


⇒連載「製造業ソフトウェアデファインドの潮流」のバックナンバーはこちら

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