ソフトウェアデファインドオートメーションを支える制御プログラム構築技術製造業ソフトウェアデファインドの潮流(2)(2/4 ページ)

» 2026年02月03日 06時00分 公開

IEC 61499を支える制御プログラム構築技術

 IEC 61499のコンセプトを支えるのが次の制御プログラム構築技術である。

イベントドリブン制御

 従来のPLCは、フルスキャン型と呼ばれる周期的なプログラム実行方式を採用してきた。これは、全ての入力を順次スキャンし、出力を更新するという仕組みである。一方、SDAではIEC 61499で定義されたイベントドリブン型の制御が適用されつつある。

 イベントドリブン制御は、センサー入力や状態変化など特定のトリガーが発生したときだけ処理を実行するため、システムの応答性やリソース効率が向上する。これにより、複雑な制御ロジックや機械学習ベースの適応制御にも柔軟に対応できる。

オブジェクト指向制御

 制御ロジックの設計にオブジェクト指向の思想を適用することも、物理設備/機器非依存のプログラム構築のためのアプローチである。従来のフルスキャン型制御では、プログラム全体を1つの大きな処理として記述しがちであったが、オブジェクト指向型では設備や機器、機能ごとにソフトウェアモジュール(オブジェクト)として分割/管理する。

 これにより、再利用性や保守性が向上し、システムの拡張や変更にも迅速に対応可能となる。また、設備単位での制御ロジックの独立性が高まり、複数設備間の協調制御や分散制御にも適している

制御の分散化

 従来は中央集権型の制御システムが主流であったが、SDAでは分散制御のアーキテクチャが重要となる。各制御ノードやエッジデバイスが自律的に制御ロジックを持ち、必要に応じて連携/協調することで、システム全体の柔軟性と耐障害性が高まる。

 例えば、ライン単位や設備単位で制御ノードを配置し、障害時には他ノードがバックアップ機能を果たすことで、ダウンタイムの最小化や運用継続性の向上が期待できる。

サービス化/コンテナ化

 SDAでは、制御ロジックや各種機能をマイクロサービスとして分割/管理する「サービス化」が進んでいる。

 従来の再利用可能な部品というよりも、マイクロサービスの組み合わせによって開発効率や保守性を高める。コンテナ化技術(Dockerなど)を用いることで、各サービスを独立したコンテナ内で実行し、必要に応じてスケールアウトやアップデートを容易に行える。 これにより、各設備や機能の独立性が確保され、障害時の影響範囲を限定しつつ、迅速な復旧やバージョンアップが可能となる。

DevOps

 SDAの導入により、制御システムの開発/運用にIT分野で一般化したDevOpsの手法が適用可能となる。

 DevOpsは、開発(Development)と運用(Operations)を統合し、迅速なリリースや継続的な改善を実現する考え方である。制御ロジックやAIアルゴリズムのバージョン管理、テスト自動化、CI/CDパイプラインの構築などにより、現場の要件変更や新機能追加にも即応できる。これにより、開発サイクルの短縮や品質向上、運用コストの削減が可能となる。

仮想化技術、オープン化/ITの活用

 SDAの根底には、IT分野で発展した仮想化技術やオープン化の思想がある。

 仮想化は、物理的なハードウェア資源を抽象化し、複数の制御ノードやサービスを仮想マシンやコンテナ上で運用する技術だが、SDAでは、PLCや周辺のプログラムモジュールなどの制御システムを仮想化して、物理ハードウェアから制御ロジックを切り離し、クラウドやエッジ上の仮想マシンまたはコンテナで制御ソフトウェアを実行することが可能となる。

 また、物理設備ごとにハードウェアを用意する必要がなくなり、柔軟なリソース割り当てや拡張が可能となる。例えば、クラウド上で複数の工場の制御ノードを一元管理し、必要に応じてリソースを動的に追加/削除できるため、グローバルな生産ネットワークの最適化にも貢献する。これにより、設備の追加や構成変更時にも物理的な制約を受けず、運用コストや管理負担を大幅に削減できる。

 オープン化とは、標準化された通信プロトコル(OPC-UA、MQTTなど)やAPIによるシステム間連携を指し、異なるベンダーや機器間でも互換性を確保し、エコシステム全体の拡張性を高めることができる。

エッジデバイスマネジメント

 工場現場の多種多様なエッジデバイス(データサーバ、センサー、カメラ、IoTゲートウェイなど)のデバイス管理をソフトウェア上で一元化し、リモートから設定変更やファームウェアアップデート、障害監視などを効率的に行う。さらに、エッジデバイスの処理能力向上、リソースの統合活用により、現場でのAI推論や画像解析、データフィルタリングなどの高度な処理が可能となり、クラウドとの連携による全体最適化(データ処理レスポンスとストレージコスト)が進む。これにより、現場の運用負担軽減とシステム全体の柔軟性向上が実現される

エッジ/クラウド統合データマネジメント

 SDAにおいては、エッジからクラウドまでのシームレスなデータマネジメントが不可欠である。

 従来は、現場ごとにデータ基盤が分散してしまい、上位システムとの連携に課題があったが、SDAではエッジ〜クラウド全体で統合的なデータ管理(UNS:Unified Namespace)が可能となる。これにより、現場のセンサーデータや運転データをリアルタイムに集約し、クラウド上でAI解析/最適化を行い、その結果をエッジデバイスへフィードバックすることができる。

 データの粒度/速度/用途に応じた最適な処理が実現されることで、意思決定支援や生産性向上に大きく貢献する。

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