耐熱性が200℃以上の圧電ポリマー、モビリティや産業機械で展開材料技術

東レは200℃以上でも圧電性能を発揮する圧電ポリマー材料を開発した。同材料は、従来の圧電ポリマー材料では適用困難であった高温領域でも、安定した特性を発揮する。形状自由度が高く、大面積にも搭載可能なため、モビリティ、ロボット、産業機械、航空/宇宙機などの振動検出/監視技術の高度化に貢献する。

» 2026年01月30日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 東レは2026年1月28日、200℃以上でも圧電性能を発揮する圧電ポリマー材料を開発したと発表した。

PVDFでは対応できなかった高温環境下で安定した検出を実現

 圧電材料とは、外部から応力や振動を加えると電圧を発生するもので、マイクやひずみセンサーなどに使用されている。主に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられているが、PVDFは120℃で分極構造を失い圧電性が喪失するため、使用温度の上限が80℃程度だ。PZTなどの無機圧電材料は、圧電性が高い一方で硬く脆いため、複雑形状や大面積での搭載が困難だった。

 また、近年はモビリティ、ロボット、産業機械、航空/宇宙機などの分野において、振動検出/監視センサーのニーズが広がっている。自動車分野では、ロードノイズを抑制するためのアクティブノイズキャンセリング(ANC)、ロボット分野では触覚としての振動検出、産業機械や航空/宇宙機の分野では、振動を常時監視し、異常を早期検知する振動監視の導入が検討されている。

 これらの分野では、広範囲にわたる振動を正確に把握するため、大面積での搭載が必要だ。さらに、モーター/エンジン周辺での使用や宇宙環境、熱媒配管などの用途では、100℃を超える高温環境での圧電性能が求められている。

 そこで東レは、これまでの研究開発で培ってきたポリマー分子設計技術と高次構造制御技術を駆使して、今回の圧電ポリマー材料を開発した。同材料は、分極構造が200℃以上でも維持されるため、PVDFでは対応できなかった高温環境下で安定した検出を実現する。加えて、ワニスやフィルム、不織布などの形状で提供できるため、複雑形状や大面積のセンサーにも適用可能だ。

従来の圧電材料と今回の材料の特性比較 従来の圧電材料と今回の材料の特性比較[クリックで拡大] 出所:東レ

 さらに、大面積に搭載可能なため、モビリティ、ロボット、産業機械、航空/宇宙機などの振動検出/監視技術の高度化にも貢献する。

PVDFと今回の材料の圧電特性の耐環境性 PVDFと今回の材料の圧電特性の耐環境性[クリックで拡大] 出所:東レ

 なお、同材料は、鉛やフッ素を含有しないので、欧州連合(EU)が定める、電気/電子機器に含まれる特定の有害物質の使用を制限する「RoHS規制」や、環境や人体で分解されにくいフッ化炭素系化合物(ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物)の使用/排出を制限するPFAS規制にも対応する。

 今後は、2028年頃の実用化を目指し、顧客向けサンプル提供/評価を進めて、同材料の用途開拓/拡大に取り組んでいく。

PVDFと今回の材料の圧電特性の違い PVDFと今回の材料の圧電特性の違い[クリックで拡大] 出所:東レ

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