近年、深刻なドライバー不足と物流コストの増大などが問題となっている。こういった問題を解消するソリューションとして、タイガー魔法瓶は日本通運や岐阜プラスチック工業と共同で、常温トラックで冷凍/冷蔵品を運べる保冷輸送器を開発した。
タイガー魔法瓶は、日本通運や岐阜プラスチック工業と協業し、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」(会期:2025年4月13日〜10月13日)で、同年5月27日以降、会場内外での保冷輸送に、新開発のステンレス密封真空断熱パネル「TIVIP(ティビップ、TIGER Vacuum Insulated Panel)」を用いた保冷輸送器を活用し、保冷輸送の実証実験を行った。
同社 真空断熱パネル・プロジェクトリーダーの南村紀史氏に、同技術の開発背景や特徴、大阪・関西万博での活用事例、今後の展開について聞いた。
2025年に創立103年目を迎えたタイガー魔法瓶は1923年に魔法瓶事業をスタートした。これ以降、一般消費者向けのビジネスを中心に展開してきた。
南村氏は「当社ではこれまでの100年間は、展開するビジネスのほぼ99%がB2C向けだった。次の100年に向けて何をすべきかと考え、魔法瓶の開発で培ってきた真空断熱技術が、産業機器などの輸送材などB2B向けビジネス分野でさらに進化/応用できる可能性があると思いついた。そこで、新たな事業の柱を作るという大きなテーマの下、2015年からTIVIPの開発と展開に注力してきた」と振り返る。
TIVIPは、二重にしたステンレス箔の内側を真空状態にし、断熱性能を高めた素材で、形状を保つために芯材となる素材を中に入れて封止している。内部を真空状態としているため、厚み10mm、サイズが440mm角以上の試作品を「JIS A 1412-2」に基づいて測定した初期測定値で、熱伝導率0.0025W/m・K以下であることが確認されており、従来の断熱材の約10〜25倍に当たる高い断熱効果を発揮することが分かっている。
さらに、ステンレス素材を使用して、魔法瓶の真空断熱技術をパネル化することで、従来の真空断熱材では得られなかった不燃性と高断熱性の長期間維持を実現した。使用素材のガス透過性能実測値からの推計値によれば、30年以上にわたり真空断熱を維持できることも明らかになっている。TIVIPの厚みは発泡ウレタンの約10分の1で、同等の断熱効果が得られる。
南村氏は「既に市場に流通している真空断熱材はハイエンドな冷蔵庫や建築物などに使われている。しかし、樹脂フィルムに金属蒸着を施した従来の真空断熱材は、使用している素材や封止方法の限界により、時間とともに真空度が低下し、断熱性能が落ちてしまうという技術的課題があった。ガスバリア性は高いが、どうしても表面から微量の空気が入り込み、場合によっては数年で性能が半減することもある」と指摘した。
その上で、南村氏は「それに対し、TIVIPは当社が魔法瓶の開発で培ってきたステンレス加工技術を応用した。ステンレスはガスをほぼ通さないため、計算上の断熱性能の寿命は数百年に及ぶ。このステンレス加工技術は難易度が高いため、他社は同様の技術を開発しにくい。魔法瓶の板厚は約0.3mmだが、TIVIPに採用しているステンレス箔はわずか0.05mmで、アルミホイルのように薄い金属を熱で溶接して気密性を保つのは至難の業だ。熱をかけ過ぎれば破れ、足りなければ隙間ができる。このステンレス箔を安定して全周にわたり溶接できる技術を含むステンレス加工技術こそが、他社で開発が困難な当社のコア技術だ」と強みに触れた。
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