連邦政府封鎖明けからAI駆動型デジタルヘルス活用が急加速する米国の医療DX海外医療技術トレンド(127)(3/3 ページ)

» 2026年01月16日 06時00分 公開
[笹原英司MONOist]
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米国保健福祉省が臨床ケアにおけるAIの導入と活用に関するRFIを発出

 上記のAI戦略を受けてHHSは2025年12月19日、全ての米国人に対する臨床ケアの一環として、AIの導入と活用をどのように加速させるべきかについて、幅広い公的意見を求める「情報提供依頼書(RFI):臨床ケアにおけるAIの導入と活用の加速」を発出し、意見募集を開始した(募集期間:2026年2月23日まで、関連情報)。

 HHSはこのRFIを通じて、部門全体における規制、保険償還、研究開発の各手段を活用し、AIの導入を可能にすることにより米国のヘルスケアシステムを前進させる方法について、ステークホルダーからのフィードバックを求めている。HHSの中でAI戦略を主導する長官補室技術政策担当/国家医療IT調整室(ASTP/ONC)は、AIが患者や介護者の体験と成果をどのように向上させ、提供者の負担軽減やケアの質向上を実現し、消費者や政府の医療コストをいかに削減できるかを含め、AI導入の加速に関する幅広い関与を求めている。

 そしてHHSは、AIの規制、償還(報酬設定)、研究開発に関する一般的な情報提供要請に加え、表2に示す通り、特別な質問事項についても情報を求めている。

表2 表2 臨床ケアにおけるAIの導入と活用を加速させるためのRFIの質問事項[クリックで拡大] 出所:U.S. Department of Health and Human Services「Request for Information: Accelerating the Adoption and Use of Artificial Intelligence as Part of Clinical Care」(2025年12月23日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成

AI規制緩和を盛り込んだ医療データ相互運用性(HTI-5)規則案を公表

 医療データの標準化に関連して、本連載第122回で、2025年10月1日に施行されたASTP/ONCの「医療データ、技術、相互運用性:電子処方、リアルタイム処方ベネフィット、電子事前承認(HTI-4)」最終規則を取り上げた(関連情報)。そして2025年12月22日には、その続編となる「医療データ、テクノロジー、相互運用性:繁栄を解き放つための ASTP/ONC による規制緩和措置(HTI-5)」規則案が公表されている(関連情報)。

 このHTI-5規則案では、2025年1月31日に発出された大統領令第14192号「規制緩和による繁栄の解放」(関連情報)および2025年4月9日に発出された大統領令第14267号「反競争的な規制障壁の削減」(関連情報)を踏まえて、以下の通り、ASTP/ONCの医療IT認証プログラムに関連した規制緩和措置が盛り込まれている。

  • 開発者の負担軽減:ASTP/ONCの任意による「医療IT認証プログラム」において、重複する要件を削除し、プロセスを効率化することにより、IT開発者の負担を軽減する
  • 定義の見直し:電子保健情報のアクセス、交換および利用をより強力に推進するため、インフォメーションブロッキングに関わる定義を改訂し、患者による自身のデータへのアクセスが妨げられないようにする
  • AI活用の相互運用性の推進:規格のモダナイゼーションと認証を通じて、AIを活用した相互運用性ソリューションの新たな基盤を構築する

 HTI-5規則案では、現行のHTI-4最終規則で規定された60の認証基準のうち、34項目を削除し、7項目を改訂することを提案している。具体的には、改訂対象基準のうち、「意思決定支援介入(decision support interventions)」に関する認証基準の適用範囲を縮小し、AIの「モデルカード」要件を完全に削除することを提案している。また、HTI-4最終規則で採用された新規および改訂済みの認証基準を含む19項目については、変更せずそのまま維持する意向を示している。

 さらにHTI-5規則案では、患者や開発者がAIに必要な電子保健情報(EHI)へアクセスしやすくなるよう、情報ブロッキング規制の緩和/明確化を盛り込んでいる他、AIモデルが利用しやすい構造化データの取得/連携を促進し、AIによる診断支援や予測モデルの開発を加速させるために、HL7 FHIR US Coreベースの標準APIへの集中投資を行うとしている。加えて、本連載第122回で触れた「リアルワールドテスト条件および認証維持要件: 執行裁量通知」を恒常化することも提案されている。

 前述のOpenAIおよびGoogleと連携するb.well Connected HealthのSDK for Health AIは、医療データとHL7 FHIR US CoreベースのAPIとの統合を加速させることを目的としており、HTI-5規則案におけるAI活用のための相互運用性推進とも合致している。

 2026年に入り、本連載第126回で取り上げたように、欧州諸国が欧州保健データスペース(EHDS)規則や欧州AI法の実装に向けて、制度面および技術面の取り組みを加速させる中、米国トランプ政権がどのように対抗していくのか注目される。

筆者プロフィール

笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)

宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。

Twitter:https://twitter.com/esasahara

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