本連載第116回で欧州保健データスペース(EHDS)を取り上げたが、2025年8月2日に汎用目的人工知能(GPAI)に関わるAI法のルールが適用開始となった欧州では、量子技術との融合に向けたアクションが本格化している。
本連載第116回で欧州保健データスペース(EHDS)を取り上げたが、2025年8月2日に汎用目的人工知能(GPAI)に関わるAI法のルールが適用開始となった欧州では、量子技術との融合に向けたアクションが本格化している。
2025年8月8日、欧州委員会の保健・食品安全総局は、「医療分野におけるAI導入に関する調査 - 最終報告書」(関連情報)を公表した。
この調査は、臨床現場においてAIが対応可能な現在および将来のニーズを特定し、AIが医療を変革する可能性を評価するとともに、医療分野におけるAIの導入を成功させるために、現在および将来的に顕在化する可能性のある、分野特有の主要な課題と促進要因を明らかにすることを目的として実施された。
今回公表された最終報告書は、図1のような構成になっている。
上記のうち「5.1 医療分野におけるAI導入のための主要なEU規制フレームワーク」において、医療分野のAIに関わる法律/規制面の課題点を取り上げている。特に、具体的な関係法令として、以下の7項目を挙げている。
表1は、これらのうちAI法に関連して医療分野のAIシステム向け要求事項を整理したものである。
表1中の「高リスク」に分類される医療分野のAIシステムは、AI法に加え、MDR/IVDRの要求事項を充足する必要があるが、実務的な取り扱いについては、欧州委員会傘下の人工知能委員会(AIB)と医療機器調整グループ (MDCG)との間で、調整作業が行われている。
参考までに、2025年6月19日、AIBとMDCGは共同で「MDCG 2025-6 - 医療機器規則(MDR)および体外診断用医療機器規則(IVDR)と人工知能法の相互関係に関するFAQ」(関連情報を公表している。
このFAQでは、医療目的で使用されるAIシステムを、「医療機器向け人工知能(MDAI:Medical Device Artificial Intelligence)」と呼んでいる。そしてAI法において、MDAIが「高リスクAIシステム」と見なされる条件を以下のように示している。
参考までに表2は、AI法第6条第1項のMDR/IVDRへの適用に関する医療機器分類別の一覧表である(一部例外あり)。
表2から分かるように、MDRのクラスI(非滅菌、非測定、使い捨て外科用)、IVDRのクラスA(非滅菌)、MDR/IVDR第5条第5項に基づく「院内製造医療機器」を除く医療機器向けAIは、AI法に基づく「高リスクAIシステム」としての要求事項を順守する必要がある。ただし、AI特有の継続的学習やアップデートへの対応など、さまざまな課題点が存在しており、今後のハーモナイゼーション動向を注視することが必要だ。
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