さまざまな対象物に導電性を付与できる透明導電フィルム材料技術

マルアイは、村田金箔グループと共同で、高い透明性と導電性に加え、熱転写でさまざまな対象物に導電性を付与できる「熱転写カーボンナノチューブ透明導電ナノシート」を開発した。

» 2026年01月15日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 マルアイは2026年1月14日、村田金箔グループと共同で、高い透明性と導電性に加え、熱転写でさまざまな対象物に導電性を付与できる「熱転写カーボンナノチューブ(CNT)透明導電ナノシート」を開発したと発表した。

「箔押しタイプ」と「トナー印刷タイプ」を用意

 マルアイは、独自に開発した導電/帯電防止インキを用いたオリジナルの導電フィルムを製造/販売中だ。導電フィルムの表面抵抗値を自由にコントロールできる点を強みに、顧客の要望や用途に合わせた製品の開発や提供も行っている。

 透明導電フィルムは、電気を通す機能や可視光を通す機能を備えている薄膜材だ。高い透明性により視認性にも優れており、ディスプレイやタッチパネルなどに広く使用されているという。近年では、透明導電フィルム市場が世界的に拡大しており、新製品の研究開発も活発に進められている。

 同社では、2018年1月にシングルウォールカーボンナノチューブを用いた高透明導電シート「スーパークリーンシート(SCS)・TC」を開発した。同シートは、可視光透過率が84.46%で、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)並みの高い透明性を有し、経時劣化が小さい点が特徴だ。主に電化製品や自動車に使われる電子部品を、静電気から保護する導電トレイとして活用されており、2020年2月には特許を取得した。

 同社は、主力製品であるSCS・TCのさらなる汎用性向上を目指し研究を重ねており、2023年11月に、水転写によりさまざまな対象物に導電性を付与できるCNT透明導電ナノシートを発表した。好評を博す一方で、水を使用する転写方式は、現場での工程管理や取り扱いが難しく、電子部品への適用にも課題があった。

 そこで、同社は新たな転写方式として熱転写に着目した。そして、SCS・TCの特性に、村田金箔グループが保有する技術や知見を掛け合わせ、熱転写によりさまざまな対象物に導電性を付与できる透明導電フィルムとして、熱転写CNT透明導電ナノシートを開発した。

 熱転写CNT透明導電ナノシートは、SCS・TCと同等の高い透明性および導電性、経時劣化が小さい特性を有し、熱転写により対象物に導電性を付与できる。

 従来品のSCS・TCは、基材であるPETフィルムと一体化した構造のため、導電トレイなどの成形品用途が主だったが、熱転写CNT透明導電ナノシートでは、新たに導電性の熱転写機能を備えたことで多様な対象物への適用が可能となり、用途の拡大を実現した。例えば、プラスチック、紙、金属、ガラスなどに転写できる。

 今回のシートは、基材であるPETフィルムと、厚み1μm以下のCNT膜との間に離型層を設けた3層構造だ。シートを加熱/加圧することで、基材からCNT膜のみが剥離し、対象物の表面に転写されることで導電性を付与できる。

 熱転写プロセスとしては、「箔押しタイプ」と「トナー印刷タイプ」を用意している。箔押しタイプは、箔押し機を用いて加熱/加圧することで、ヒートシールCNT膜を対象物に転写する方式だ。安定した転写性にも優れ、量産工程に適用できる。

「箔押しタイプ」の熱転写プロセスと熱転写CNT透明導電ナノシート 「箔押しタイプ」の熱転写プロセスと熱転写CNT透明導電ナノシート[クリックで拡大] 出所:マルアイ
箔押しタイプの紙への転写例「箔押しタイプ」の紙への転写例[クリックで拡大] 出所:マルアイ

 トナー印刷タイプは、ラミネーター機などを用いて加熱/加圧することで、複合機などで出力した転写基材にCNT膜を転写する方式だ。部分的な転写やパターン形成がしやすく、試作や小ロット用途に適している。

「トナー印刷タイプ」の熱転写プロセスと熱転写CNT透明導電ナノシート 「トナー印刷タイプ」の熱転写プロセスと熱転写CNT透明導電ナノシート[クリックで拡大] 出所:マルアイ
トナー印刷タイプの紙への転写例 トナー印刷タイプの紙への転写例[クリックで拡大] 出所:マルアイ

 なお、熱転写CNT透明導電ナノシートの表面抵抗率はCNT膜の膜厚を変えることで102〜108Ω/sqまでの調整が行える。

 今後は、熱転写CNT透明導電ナノシートの特長を生かした用途展開を進めていく。併せて、CNTを用いた導電技術および印刷技術の高度化に取り組み、より高機能/高付加価値な製品の開発を目指す。

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