溶媒や樹脂に分散する多層グラフェンや飛散量が少ないCNT造粒品を開発材料技術

大阪ガスケミカルは、「ケミカルマテリアル Japan2024」で、開発品として「多層グラフェン」や「カーボンナノチューブ(CNT)造粒品/コンパウンド」を披露した。

» 2024年11月29日 07時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 大阪ガスケミカルは、「ケミカルマテリアル Japan2024」(2024年11月21〜22日、東京ビッグサイト)内の「第7回 先端化学材料・素材総合展」に出展し、開発品として「多層グラフェン」や「カーボンナノチューブ(CNT)造粒品/コンパウンド」を披露した。

低濃度でも特性を発揮

 多層グラフェンは、水と添加剤で黒鉛を酸化/還元せずに剥離させた「多層グラフェン水分散液」と多層グラフェン水分散液を乾燥させた「多層グラフェンパウダー」の2種類をラインアップしている。黒鉛を酸化/還元せずに剥離するため、酸素を含まず熱伝導/電気伝導性に優れる。大阪ガスケミカルの説明員は、「水中で1段階で黒鉛を剥離する独自製法を採用している。この製法は安全で低コストで行える」と話す。

「多層グラフェンパウダー」(左)と同パウダーをポリプロピレンに分散した樹脂(右) 「多層グラフェンパウダー」(左)と同パウダーをポリプロピレンに分散した樹脂(右)[クリックで拡大]
多層グラフェンの特徴 多層グラフェンの特徴[クリックで拡大] 出所:大阪ガスケミカル

 さらに、溶媒や樹脂に応じた表面制御で高い分散性を持ち、通常はグラフェンが分散しない溶媒や樹脂に分散できる。低濃度でも特性を発揮する他、高濃度の添加に対応し高い熱/電気の特性を有す。

 多層グラフェン水分散液は分散して塗料/インク(水系/有機系)で使え、多層グラフェンパウダーは樹脂コンパウンドやオイル/グリスで利用できる。多層グラフェンは現在、サンプルの提供などを行っている段階で発売日は未定だ。

多層グラフェンの特性 多層グラフェンの特性[クリックで拡大] 出所:大阪ガスケミカル

飛散しにくいCNT造粒品/コンパウンド

 CNT造粒品は、同社の造粒化技術によりCNTの飛散量を低下させ、ハンドリング性を改善させたものだ。CNT造粒品の吸入性粉じん量は0.032mgで、かさ密度は0.180g/mL。圧縮強度(N)の鉛直方向は1.07Nで、水平方向は1.19Nとなっている。大阪ガスケミカルの説明員は、「一般的なCNTの粉末と比べ飛散しにくいため輸送効率にも優れる」と述べた。

CNTの粉末(左)とCNT造粒品(右) CNTの粉末(左)とCNT造粒品(右)[クリックで拡大]
CNT造粒品の特徴 CNT造粒品の特徴[クリックで拡大] 出所:大阪ガスケミカル

 CNTコンパウンドは、同社のコンパウンド技術により、CNTの凝集物の低減と低濃度高導電性を両立させたものだ。一例を挙げると、この技術で2wt%のCNTとポリカーボネートを組み合わせた導電性コンパウドの分散度は98%で、凝集塊の割合は0.2%となっている。凝集塊の数は3〜19μmが90個で、19μm以上は7個だ。大阪ガスケミカルの説明員は、「CNTコンパウンドは、CNTと樹脂をつなぐバインダーが入っており、このバインダーにより強度や分散度を高めている」とコメントした。

 CNT造粒品/コンパウンドは現在、サンプルの提供などを行っている段階で発売日は未定だ。大阪ガスケミカルの説明員は、「現状、CNT造粒品/コンパウンドに関しては約100キロの試作に対応できる」と語った。

CNTコンパウンドの特徴 CNTコンパウンドの特徴[クリックで拡大] 出所:大阪ガスケミカル

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