ペロブスカイト太陽電池や核融合発電など、2025年の注目材料とは素材/化学 年間ランキング2025(2/3 ページ)

» 2025年12月25日 08時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

第1位はペロブスカイト太陽電池の生産速度を高めるフィルム

 2025年に、MONOist 素材/化学フォーラムで最もよく読まれた記事(第1位)は「ペロブスカイト太陽電池の生産速度を10倍にするフィルム」でした。

 同記事では、麗光が「第16回 高機能素材 Week −Highly-Functional Material Week−」(会期:2025年11月12〜14日、幕張メッセ)内の「第16回 高機能フィルム展 FILMTECH JAPAN」で、開発品として披露した「フィルム型太陽電池向け連続封止可能な封止材付きハイバリアフィルム」を取り上げています。

 フィルム型太陽電池の製造の多くは、真空ラミネーターを使用し、1枚ずつバリアフィルムを熱圧着して封止する必要があり、生産性が低いという課題がありました。そこで、麗光はこのハイバリアフィルムを開発しました。同フィルムは、常温/常湿に近い大気下でロールtoロール方式で連続封止できます。これにより、真空ラミネーター方式と比べて、約10倍の生産性向上を見込んでいます。真空ラミネーター用の設備が不要になるため、製造コストの低減にもつながるそうです。

 しかし、同フィルムは大気下では水分が抜けにくいという課題があります。そのため、同社では現在、このハイバリアフィルムで利用している封止材の改良を進めています。改良により水分を抜けやすくし、水分で太陽電池モジュールの性能が劣化しないようにすることを目指しています。

「フィルム型太陽電池向け連続封止可能な封止材付きハイバリアフィルム」 「フィルム型太陽電池向け連続封止可能な封止材付きハイバリアフィルム」[クリックで拡大]

注目を集めるペロブスカイト太陽電池材料

 この他にも上位10本の記事にペロブスカイト太陽電池関連の記事が多数入りました。このことからも、2025年はペロブスカイト太陽電池に関する材料や取り組みが素材/化学フォーラムで多くの読者の関心を集めたことが分かります。

 9位の『コニカミノルタのフィルムがペロブスカイト太陽電池の「弱点」を克服』では、エネコートテクノロジーズにコニカミノルタ製のバリアフィルムが供給され、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に活用されることを紹介しています。

 ペロブスカイト太陽電池は、内部への水分の侵入により発電層が劣化する他、量産スケールアップ時に品質が低下することが懸念されています。これらの解決策となるコニカミノルタ製のバリアフィルムは水分侵入を抑制するハイバリア層が形成されています。さらに、同社の機能性フィルム事業で培った生産技術により、量産スケールアップ時でも安定した性能を保てるそうです。

 コニカミノルタ 執行役員 技術開発本部長の岸恵一氏は「シリコン系太陽電池の寿命は20年ほどだが、現状のペロブスカイト太陽電池は5〜10年程度だ。原因は水分侵入による劣化となる。ペロブスカイト太陽電池に使用される一般的なバリアフィルムは『平たん化層とバリア層を交互に積層した構成』だが、当社のバリアフィルムは『平たん化機能付きバリア層とバリア層から成る積層』でハイバリアを実現する。これにより、薄膜化と低コスト化を達成しつつ、高いバリア性能を発揮できる」と説明しています

コニカミノルタのバリアフィルムの概要 コニカミノルタのバリアフィルムの概要[クリックで拡大] 出所:コニカミノルタ

 10位の「積水化学がペロブスカイト太陽電池の量産化を開始、事業会社も設立」では、積水化学工業が、政府が目指すペロブスカイト太陽電池によるギガワット(GW)級の供給体制構築を2030年の早期までに中心となり実現するため、まずは2027年に100メガワット(MW)のフィルム型ペロブスカイト太陽電池製造ライン稼働を目指し設備投資を行うことを取り上げています。

 同社のフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、バリアフィルム、封止樹脂、基材、透明電極、発電層(ペロブスカイト)、電極、バックシートから成るものです。特長は、重さが1m2当たり約1.0kgと軽量で、曲率半径15cm程度と柔軟性があり、厚みが約1mmと薄い点にあります。ペロブスカイトの主原料のヨウ素は世界の30%が日本で産出されており、調達しやすいという利点もあります。

 なお、同社は、大阪府堺市にあるシャープの本社工場の建物や電源設備、冷却設備などを譲り受け、ペロブスカイト太陽電池製造設備を導入し、製造/販売を行います。

 ペロブスカイト太陽電池の事業を開始するに当たりペロブスカイト太陽電池の設計、製造、販売を行うことを目的とした新会社「積水ソーラーフィルム株式会社」を2025年1月6日に設立し事業運営を実施します。

 積水ソーラーフィルムではまず、ペロブスカイト太陽電池が持つ軽量でフレキシブルという特徴を生かし、耐荷重性が低い屋根や災害時避難所となる体育館などを中心に導入を進めます。さらに量産効果でコストを低減し、民間の工場、倉庫などの屋根、外壁面もターゲットに需要創出を行い、事業拡大を狙っていきます。

積水化学工業のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の概要 積水化学工業のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の概要[クリックで拡大] 出所:積水化学工業

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR