小寺 前例のない製品ということで、商品としてどこまで耐えられればいいのかという基準を、どこに置いたんでしょうか?
山田氏 サ時計は耐熱温度としては100度までとなっています。あと少し条件もありまして「腕につけた状態で15分まで」というような特殊な耐熱性になっています。
小寺 なるほど。腕につけることである程度放熱ができる構造だということでしょうか?
山田氏 そうです。サウナの中に置いておくよりも、腕につけた方がサ時計側から身体に熱が移動して、時計本体の熱が上がりづらいというのを、実験で検証して、そういう形にしています。外した状態で置いておくとどうしても熱くなるため、次に触れるときにやけどをする可能性があります。やけど防止という観点からも腕につけてご使用くださいというのをお願いしています。
告知用の漫画でも示しているのですが、内部温度が測れる試作機みたいなのを特別に作って、百貫君と小林君と自分で実際に都内で最も熱いサウナに行くような検証も何度かやりました。
小寺 身体張ってますね(笑)
山田氏 自分は早々にリタイアしたんですけど、百貫君はサウナの上段、中段、下段で少しずつ暑さが変わるので、上段に15分とか、それぞれの環境で検証するために、すごい耐えていただきました(笑)
小寺 サウナでガンガンに熱くなった後に、水風呂にザブンと入れても大丈夫なように設計されてるということですか?
山田氏 そうです。そういう環境を想定した試験も頑張って行いました。小林君が実験室や実際のサウナでも試験をやっています。
小寺 この耐熱電池は、電池交換するときは裏のネジを4つ外して交換するということですね?
山田氏 はい。ただ耐熱電池自体は市販されてないものなので、サービスセンターに送っていただいて交換するという形になります。一般の時計店とかではちょっと対応できないものになっています。
小寺 2024年にクラウドファンディングもやられていましたが、反響はいかがでしたか?
山田氏 最初の反響で言うと、クラウドファンディングで約2200台ぐらい用意していたのですが、9分ぐらいでなくなってしまうというような状況でした。
小寺 9分はとても早いですね。まあでも今の日本のサウナ人口からすれば、2200台は少ないか……。
山田氏 最初はやっぱり「サウナ用の時計が本当に売れるのか」というのをいろいろな人から言われて、自分でもどれぐらい反響があるかは分からない感じだったのですが、想定以上の反響いただけて良かったと思っています。
小寺 ユーザーからの声で、ユニークなご意見はありましたか?
山田氏 普段使いを実際にしている人からの声があってうれしかったですね。もともと、サウナの中だけで使うデバイスにとどまらず、自分がサウナ好きっていうアピールするためのグッズだったり、普段もちょっとサウナを腕に感じられるというようなニュアンスだったりを、表現することを目指して製品化を進めたので、思いが伝わっていると感じました。
あと、機能がシンプルで、リセットのボタンを押すとストップウォッチみたいな形で時間が測れるので、ランニングでラップタイムを測るような使い方をしている人もいるみたいです。
小寺 ここまでシンプルに完成している製品で、今後のことを聞くのもやぼな気もしますが、もしこれ以上の改良点があるとすればどこだと思いますか?
山田氏 「これが完成系」というような気持ちは結構あるのですが、ユーザーレビューや口コミの中で「暗いサウナでは見にくい」というようなご意見もありました。一応、針の色が付いている部分は蓄光塗料になってはいますが、ずっと室内にいるとなかなか蓄光が機能しない課題があります。ですから、LEDライトを付けるなど、そういったプチ進化はどんどん続けていきたいと思っています。
サウナの壁に12分計が設置してあるところも多いが、あの12分計は自分のタイミングでは動作してくれない。入室した時には何分かにはなっているわけだが、まあ大体入っている間に忘れる。そうすると何分入っているのか分からなくなり、適当な時間で出ることになる。一方、サ時計なら自分のための12分計なので、きちんと時間が測れる。暑さで何も考えたくない時に、この違いは大きい。
デザインもグッズとしての可愛らしさがあり、しかもバンドがロッカーキーと同じなので、サウナで目立たない。普段使いとしても、ユニークさがあり、さりげなくサウナ好きアピールもできる。
もちろんサウナに入らなくても、普通の入浴にも使えるので、メガネを外すと壁の時計が見えないという方にもおすすめだ。プレゼントとしてもシャレが効いている。オンラインストア価格は1万6500円だが、売り切れのタイミングも多い人気商品だ。潤沢に買えるようになったタイミングで、ぜひ購入してみたいと思っている。
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小寺信良(こでら のぶよし)
ライター/コラムニスト。1963年宮崎市出身。
18年間テレビ番組編集者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで幅広い執筆・評論活動を行う。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。2015年から4年間、文化庁文化審議会専門委員を務めたのち、2019年に家族で宮崎へ移住。近著に改訂新版「学校で知っておきたい著作権」がある。
Twitter(現X)アカウントは@Nob_Kodera
近著:改訂新版「学校で知っておきたい著作権」(汐文社)
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