オムロンは1973年の血圧計初号機発売以来、現在では130以上の国と地域で製品を展開している。オムロン ヘルスケア 商品事業統轄部グローバル商品事業部の浅井義人氏は、「血圧計事業における最大の功績は、かつて『病院で測るもの』だった血圧測定を『家庭で測るもの』へと変革させた点にある」と語る。
そもそも家庭における血圧測定は、医療機関での散発的な測定では捉え切れない身体状態を把握できるという医学的優位性がある。例えば、診察室では正常値を示すにもかかわらず日常生活下では高値となる「仮面高血圧」の発見や、1日の中での変動の把握などがこれに該当する。
こうした家庭血圧の有用性は医学外でも徐々に認められてきた。高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会)における家庭血圧の位置付けは、2000年前後までは「参考程度」であったが、2004年からその重要性が示唆され始め、ついに2014年には「高血圧診断には家庭血圧を優先する」と規定されるに至った。
1973年にオムロン初の電子血圧計「マノメータ式手動血圧計(HEM-1)」が誕生したが、このモデルは、ユーザー自身が加圧し聴診器で音を聞く方式であり、手技の習熟が必要だった。この「どのくらい加圧していいかわからない」という課題を解決すべく、同社は1991年に、加圧中に最高血圧値を推定し個々人に最適な加圧値を自動設定する「ファジィ技術」を搭載した血圧計を開発。ボタン1つで最適な加圧と測定が可能になり、老若男女を問わず「誰でも簡単に測れる機器」としての地位を確立した。
松阪工場では初号機の開発こそ携わらなかったものの、基本性能の向上に加え、超小型手首血圧計や、通信機能付きモデル、本体とカフが一体化したチューブレス血圧計など、時代のニーズに即応したデバイスの開発/生産を主導してきた。
同社の血圧計は、各国の医療機器精度基準をクリアし、許認可が必要な97カ国で認可を取得し、近年そのシェアをさらに拡大させている。発売から累計販売台数1億台を突破するまでに36年(2009年)を要したが、その7年後の2016年に2億台、その5年後の2021年に3億台、そして今回4年後となる2025年10月に4億台を突破した。現在、グローバル市場における具体的シェアは公表していないものの、日本国内においては販売台数ベースで6割のシェアを誇り、圧倒的な市場地位を維持している。
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