血圧計累計4億台を達成、「世界同一品質」を担うオムロン松阪工場のモノづくりメイドインジャパンの現場力(2/4 ページ)

» 2025年11月26日 06時30分 公開
[安藤照乃MONOist]

「世界同一品質」を実現する松阪工場のモノづくり現場

 マザー工場である松阪工場では、前述した「世界同一品質」を確実に担保するため、高度に自動化、デジタル化された独自の製造現場を構築している。

 同工場における血圧計の製造プロセスは主に、アルゴリズムやプロセッサを搭載した基板の実装に始まり、ポンプやセンサー部分などを組み合わせたモジュール部分の製造、筐体(ケース)の組み立てやカフ(腕帯)の装着、最終検査、梱包(こんぽう)、出荷という流れで進行する。

 この工程の中で、測定精度を左右する心臓部であるモジュールの製造はほぼ自動化している。自動組み立て機械に、人がモジュールベース(各部品の設置容器)を投入し、組み立て機械が基板やポンプ、バルブなどの取り付けを行い、人が完成されたモジュールの最終確認を行い、次の工程へと移る。このモジュール製造ラインはほぼ24時間体制で稼働しており、1日当たり約1万1000台の生産能力を誇る。

(左)モジュール部分の自動生産ライン、(右)モジュールベースを中心に組み立てられる部品類[クリックで拡大]

 松阪工場で製造されたこのモジュールは、そのまま海外工場へと供給される。特に中国やベトナム工場では、完成されたモジュールをケースに組み込むというシンプルな工程のみを行うことで、現地の作業習熟度に依存せず完成品を仕上げる仕組みとしている。一方で、全ての工程を機械化しているわけではない。機械では実現が困難な微細なはんだ付け作業などは、熟練作業者による手作業を融合することで、柔軟な生産ラインとした。

 モジュール機器の自動生産に続く、もう1つの生産ラインの柱が、「徹底した品質管理体制」の確立だ。血圧計の基板には、それぞれ2次元コードが刻印されており、これを各工程で読み込むことで、製品個体が「いつ、誰が、どの設備で、どのような条件で加工したか」といった製造履歴が自動的にシステム上で蓄積される。

 また、部品を1つ組み付けるたびに、直後にカメラやセンサーが自動で品質をチェックしており、これに合格しない限り次の工程に進むことはできない。ある血圧計モデルでは、モジュール工程で9項目、組み立て工程で13項目、出荷前検査で19項目と、トータル41項目の検査工程を設けており、不良品の流出を防ぐ徹底した品質管理体制を取っている。

高精度な作り込みと品質管理体制 高精度な作り込みと品質管理体制[クリックで拡大]出所:オムロン
モジュール化による生産性向上と、人と機械の融合 モジュール化による生産性向上と、人と機械の融合[クリックで拡大]出所:オムロン

 田村氏は、「松阪工場で盤石な仕組みを構築し、それをグローバルの工場へ展開することで、世界中どこででも同品質を提供できている」と同工場の意義を強調する。

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