CO2を再資源化した“e-エタノール”の製造技術は、CO2資源化研究所が開発した「UCDI 水素菌」を用いたバイオエタノール生産プロセスだ。UCDI 水素菌は、水素とCO2をエネルギー源に、1gが24時間後に16トン(t)に増殖するという特長を有す。この特長を生かして、UCDI 水素菌の天然株は非遺伝子組み換えの飼料やプロテインの原料に使える。
CO2資源化研究所では、増殖非依存型バイオプロセスに対応した遺伝子組み換え株のUCDI 水素菌も開発している。増殖非依存型バイオプロセスは、1gが24時間後に増殖する量を1tに抑制し、抑えられた分である約15tの増殖エネルギーで化学品(アミノ酸、有機酸、芳香族など)やバイオ燃料を生産する。
千代田氏は「当社では、遺伝子組み換え株のUCDI 水素菌を搭載したバイオリアクターを活用し、製油所で発生する低濃度CO2と低濃度水素を分離回収せずに不純物を含んだ状態で、バイオエタノールの原料とすることを検討している。これにより、バイオエタノール製造で必要な原料のコストを低減し、製品価格の低減を図る。このバイオリアクターの開発に当たって、CO2資源化研究所はエタノールと不純物への耐性を備えたUCDI 水素菌の開発を担当し、当社ではプロセスの検討を担っている」とコメントした。
各技術の共通点に関して、松岡氏は製品価格を抑える取り組みに注力している点だという。その上で、「ガソリンスタンドでは一般的に、周囲のガソリンスタンドよりも少しでもガソリンの価格が高いと購入されない傾向にある。そういったシビアな業界にいるため、価格の大切さを認識している。顧客に手に入れやすい価格でエネルギーを安定供給するということを当社の使命としていることもあり、“高くても良い”とはいえない」と強調した。
COCR技術で生産した低コスト水素を用いて製造した合成燃料や、Cell Breakerを活用して食品加工残渣から抽出したバイオエタノールの製品化は2030年を予定している。遺伝子組み換え株のUCDI 水素菌を備えたバイオリアクターの技術開発も2030年に完了する見込みだ。
松岡氏は「同技術により得られたバイオエタノールの製品化は2030年代前半に行いたい。これらの技術により、合成燃料やバイオエタノールの事業を石油事業というコアビジネスを補助していくような存在とすることを目指す」と明かした。
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