その6年後の2021年3月に稼働したのが現在のES4である。x86ベースの演算リソースやGPUベースの演算リソースも利用したい、という研究者のニーズに応えて、地球シミュレータとしては初めてマルチアーキテクチャ型のハイブリッド構成が採用された(図5、図6)。
それぞれのノードの概略は次の通りである。
NEC製のベクトルプロセッサ「SX-Aurora TSUBASA Vector Engine」×8基とAMD EPYC 7742プロセッサ×1基を内蔵した2U高さの「NEC SX-Aurora TSUBASA B401-8」(図7)を684台並べて構成したシステムである。計算性能は、ノード当たり21.9TFLOPS、トータルで14.9PFLOPSである。
AMD EPYC 7742×2基を内蔵したHPE Apollo 2000 Gen10 Plus Systemを720台並べて構成したシステムである。ピーク性能は3.3PFLOPSである。
NVIDIA A100 Tensor Core GP×8基とAMD EPYC 7741×2基を内蔵したノードを8ノード並べて構成したシステムである。GPU当たりの演算性能は倍精度で19.5TFLOPSである。GPUクラスタ単独での使い方の他、VE搭載ノードで得た結果をGPU搭載ノード上のAIアプリケーションを使って解析あるいは学習させる使い方を想定している。
3つのサブシステムはファットツリー構成にした帯域幅200GbpsのInfiniBand HDRで接続されている。また、VE搭載ノード同士は演算通信を高速化するために別系統の帯域幅200GbpsのInfiniBand HDRでも接続されている。
容量60PBのメインストレージと容量1.3PBのオールフラッシュストレージで構成される。また、研究内容や解析結果をエビデンスとして残すために、大規模なテープストレージシステムが別途用意されている(図8)。
これらを合わせたES4の総演算性能は19.5PFLOPS、総メモリ容量は556.5TBである。地球全球を数km程度のメッシュで区切った大気大循環モデルや海洋大循環モデルの解析も可能な高い性能が実現されている。
地球シミュレータに合わせて建設された建屋が冒頭で触れたシミュレータ棟である(図9)。完成は2000年12月だ。
当時としては前例のない規模のスーパーコンピュータを収容するとあって、防災に加え、設置環境からの種々の悪影響を抑制することを強く意識した建屋設計となっており、外来ノイズの侵入を防ぐ徹底した電磁シールド、大地との絶縁、架空地線方式による被雷対策、照明からのノイズを防ぐために計算機室外に光源を置いたライトガイド方式の採用など、さまざまな工夫が施されている。建物は免震である。
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