地球シミュレータの構想設計は1997年頃に始まった。大気大循環モデルのメッシュの間隔をそれまでのおよそ100kmから、経度、緯度、高さともに10km程度にまで細かくすることが目標として掲げられた。1000倍の計算量を意味のある時間内で処理するには、実効5TFLOPS、ピーク30TFLOPS程度の性能が必要と判断され、それら処理の効率や当時の半導体技術などを鑑みベクトル方式が採用された。
ちなみに、なぜGPUを採用しなかったのかといった疑問もあろうかと思われるが、NVIDIAのGPUが数値演算に使われ始めたのは2007年頃であり、地球シミュレータが計画された1990年後半はベクトル型がスパコンの代名詞であったことは補足しておきたい。
初代のESはNECのベクトルプロセッサ技術をベースに、半導体(LSI)技術、LSIパッケージング技術、実装技術、冷却技術、電源技術などに21世紀初頭の最先端技術を取り入れて開発されており、総プロセッサ数は5120基、主メモリ容量は10TBで、システム全体のピーク性能は40TFLOPSであった(図3)。その性能は当時としては圧倒的であり、スパコンのベンチマークであるTOP500において、2002年6月〜2004年6月まで1位であった。
プログラミング環境としては地球シミュレータに最適化したFortanであるHPF(High Performance Fortran)/ESなどが提供された。
ESの後継として2009年3月に稼働を開始したのが第2世代の地球シミュレータ「ES2」である(図4の右側)。ベクトルプロセッサにはチップ単体で102.4GFLOPSの性能を持つNECの「SX-9」を採用。これを8基搭載した計算ノード160台を並べて構成し、総プロセッサ数は1280基、ピーク性能はESの3.2倍、131TFLOPSであった。
LINPACKベンチマーク値は122.4TFLOPSで2009年6月のTOP500リストで世界22位だったが、「HPC Challenge」ベンチマークの高速フーリエ変換処理部門で2010年11月に世界1位を獲得し、応用シミュレーションにおける能力の高さを実証した。
2015年3月には第3世代の地球シミュレータ「ES3」が稼働した(図4の左側)。コアあたり64GFLOPSで、4コアを内蔵したチップ単体で256GFLOPSの性能を持つNECのベクトルプロセッサ「SX-ACE」を採用し、5120ノード(2万480コア)構成で、最大ピーク性能はES2のほぼ10倍に相当する1.311PFLOPSであった。
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