もう一つの焦点は、AI開発の生産性とコストの最適化である。その解としてメシエイ氏が示したのが、新しいカテゴリーの小型ワークステーション「HP ZGX Nano G1n AI Station」だ。
HPは過去4〜6カ月の間に100社以上の顧客と意見交換を行い、AI開発環境に求められる条件をヒアリングした。その結果、約80%の企業が「AI開発専用のハードウェアが必要」と回答し、70%が「データプライバシーを懸念」、さらに80%が「クラウドコストの上昇が最大の課題」と答えたという。
HP ZGX Nano G1n AI StationはAI開発機として位置付けられ、コンパクトサイズの筺体に「NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip」を搭載し、AI PC認定基準(40TOPS以上)の25倍に当たる1000TOPSの演算性能を発揮する。クラウドに頼ることなく、単体で2000億パラメーター、「NVIDIA ConnectX-7」で2台を連携させれば4000億パラメーターの処理に対応し、ファインチューニングは最大700億パラメーターまで可能である。
スタンドアロンでの運用の他、既存PCの補助デバイスとしても使用でき、複数台をネットワークで接続すれば個人レベルのAIクラウド環境を構築できる。手のひらに収まるサイズながら、省エネルギー性とコスト効率に優れた設計となっている。
HP ZGX Nano G1n AI Stationには、NVIDIAのAIソフトウェア群と「NVIDIA DGX OS」環境を統合するエンタープライズグレードのソフトウェアスタックが搭載されている。さらにHP独自の「HP ZGX Toolkit」により、AIワークロードの高速化と効率化を実現する。Ubuntuをベースとし、主要なAIツールがあらかじめ組み込まれているため、セットアップに要する時間は従来の数日からわずか数分に短縮されるという。
メシエイ氏はHP ZGX Nano G1n AI Stationを“プラグ&プレイのAIコンパニオン”と表現し、「データサイエンス、ロボティクス、コンピュータビジョン、自然言語処理など多様な分野で活用できる」と述べた。
また、上位モデルとして「NVIDIA GB300 Grace Blackwell Ultra Desktop Superchip」を搭載した「HP ZGX Fury AI Station」も計画されている。これはAIファクトリー時代に向けた主力機として開発が進められており、価格は構成によって異なるが3000〜4000米ドル前後を見込むという。
最後に、メシエイ氏は「AIの未来は、今、あなたの手のひらの中にある。そして、働き方の未来は既に始まっている」と述べ、講演を締めくくった。
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