HPが描く次世代AIワークステーション 「Z Boost」と「ZGX Nano」による革新の姿HP Future of Work AI Conference 2025(1/2 ページ)

日本HPは「HP Future of Work AI Conference 2025」を開催した。本稿では、「次世代AIワークステーション(Zシリーズ) 〜ZGX NanoとZ Boostによるイノベーション〜」をテーマに登壇した、HPのマイケル・メシエイ氏の講演内容を紹介する。

» 2025年10月15日 06時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 日本HPは2025年10月3日、東京都内で「HP Future of Work AI Conference 2025」を開催した。同イベントでは「はたらく人に、こだわる自由を。」をテーマに、オンデバイスAI(人工知能)の可能性とその活用方法を多角的に発信した。

 本稿では、「次世代AIワークステーション(Zシリーズ) 〜ZGX NanoとZ Boostによるイノベーション〜」をテーマに登壇した、HP Senior Director - Global Business Development, AI & Data ScienceのMichael Messier(マイケル・メシエイ)氏の講演内容を紹介する。

HP Senior Director - Global Business Development,AI & Data Scienceのマイケル・メシエイ氏 HP Senior Director - Global Business Development,AI & Data Scienceのマイケル・メシエイ氏

どれほど優れた技術も顧客に支持されなければ意味がない

 メシエイ氏は、AIやデータの進化が加速する現在において、「HPにとってイノベーションは単なるスローガンではなく、事業の中心にある考え方だ」と語った。どれほど優れた技術を開発しても、顧客に支持されなければ意味がないとし、「顧客の賛同、意見、フィードバックこそが、ソリューションの成功を形づくる最も重要な要素である」(メシエイ氏)と強調した。

 また、AI時代の共通課題として、データの急増、複雑化するワークフロー、短期間で成果を求められる環境、そして高まるセキュリティリスクを挙げた。こうした中で、HPは安全性と効率性の両立を重視しており、「世界で最も安全なPCとプリンタを提供する企業であることを誇りに思う」とメシエイ氏は述べた。

HPが考えるAI戦略の本質 ユースケースに応じた選択が重要

 AIに対するHPの姿勢について、メシエイ氏は「製品を販売すること自体が目的ではない」と説明した。多くの顧客が求めているのは「どのような問題を、どのように解決できるか」であり、AI戦略の本質はそこにあるという。

 同氏は、AI活用のフェーズを「消費(Consumption)」「展開(Deployment)」「開発(Development)」の3つに分類した。「ChatGPT」や「Copilot」のような生成AIを“利用(消費)”する段階では高性能なワークステーションは必ずしも必要ではないが、AIを組織全体で“展開”する際にはより大きな演算能力が求められる。さらにAIを“開発”するためには、専用の環境とハードウェアが欠かせない。

 メシエイ氏は「適切な技術を、適切な目的に使うことが重要であり、万能な1台のPCは存在しない」と語り、ユースケースに応じた選択の重要性を示した。

メシエイ氏は「ユースケースに応じて適切な環境を選択すべきだ」と訴える メシエイ氏は「ユースケースに応じて適切な環境を選択すべきだ」と訴える[クリックで拡大] 出所:日本HP

GPUを眠らせない 「HP Z Boost」が可能にする高速ワークフロー

 GPUリソースの運用に関して、メシエイ氏は「多くの企業が高価なGPUを導入しても、稼働率が30〜70%にとどまる」と指摘。「ガレージにフェラーリを置いたまま、めったに乗らないようなものだ」(メシエイ氏)と例え、活用不足の現状を示した。

 この課題を解決する技術として「HP Z Boost」を紹介した。HP Z Boostは、分散したGPUを仮想的に統合し、組織全体で共有する仕組みを提供する。これによりGPUの稼働率を高め、最大5倍の処理性能向上を実現するという。

GPUの稼働率を高め、最大5倍の処理性能向上を実現する「HP Z Boost」 GPUの稼働率を高め、最大5倍の処理性能向上を実現する「HP Z Boost」[クリックで拡大] 出所:日本HP

 講演では、統合グラフィックス搭載の「HP ZBook 8 G1i 14inch」で画像生成AIモデル「Stable Diffusion」を実行したデモを披露した。HP Z Boostを使わない場合は1時間15分かかった処理が、利用時にはわずか22秒で完了したという。

「HP ZBook 8 G1i 14inch」で画像生成AIモデル「Stable Diffusion」を実行したデモ。1時間15分かかった処理が、HP Z Boostを使用することでわずか22秒で完了した 「HP ZBook 8 G1i 14inch」で画像生成AIモデル「Stable Diffusion」を実行したデモ。1時間15分かかった処理(左)が、HP Z Boostを使用することでわずか22秒で完了した(右)[クリックで拡大] 出所:日本HP

 また、メシエイ氏は「1日10回のレンダリングを行うケースでは、処理が完了するまでに、従来は約12時間半を要していたが、Z Boostの活用によりわずか4分以内で完了する」と述べ、その効果を具体的な数値で示した。

 この仕組みにより、GPUリソースを柔軟に分配しながら効率的に活用できる。HP Z BoostはAIワークフロー全体の生産性を高め、開発現場の時間的な制約を大幅に減らす技術として位置付けられている。

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