NVIDIAは、Google DeepMind、Disney Researchと共同開発してきたロボットシミュレーション用物理モデル「Newton Physics Engine」のβ版をリリースしたと発表した。
NVIDIAは2025年9月29日(現地時間)、Google DeepMind、Disney Researchと共同開発してきたロボットシミュレーション用物理モデル「Newton Physics Engine」のβ版をリリースしたと発表した。Newton Physics Engineの開発はLinux Foundationの傘下で行われており、オープンソースソフトウェア(OSS)としてGitHubで公開されており、NVIDIAがロボット学習用のオープンソースの統合フレームワークとしてGitHubで公開しているNVIDIA Isaac Labでも利用可能になっている。
Newton Physics Engineは、2025年3月開催のNVIDIAのユーザーイベント「GTC 2025」において、NVIDIA、Google DeepMind、Disney Researchの3社が共同で開発しているオープンソースのロボットシミュレーション用物理モデルとして明らかにされていた。今回、ロボティクスと機械学習の国際会議である「CoRL 2025」(2025年9月27〜30日、韓国ソウル)の開催に合わせてβ版がリリースされた。
Newton Physics Engineは、NVIDIAのCUDA-Xアクセラレーションライブラリである「NVIDIA Warp」上で構築されるとともに、デジタルツインプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」に用いられているOpenUSDフレームワークを基盤としている。ただし、オープンソースソフトウェアとして開発されていることもあり、NVIDIAが提供するNVIDIA Isaac Labだけでなく、オープンソースのロボット学習用フレームワークである「MuJoCo Playground」でも利用可能になっている。
Newton Physics Engineを活用すれば、開発中のロボットが雪や砂利の上を歩行したりカップや果物をつかんだりするなどの複雑な動作をシミュレートできるようになり、仮想環境内で最適化を繰り返すことで、現実世界のロボットにその最適な動作を再現させられるようになるという。
Newton Physics Engineのβ版リリースに合わせて、汎用人型ロボットの基盤モデルである「NVIDIA Isaac GR00T」の最新版となる「N1.6」が間もなくリリースされる。最新版のNVIDIA Isaac GR00Tでは、カスタマイズ可能なロボット開発用のVLM(大規模視覚言語モデル)「Cosmos Reason」が統合される。
ロボットの頭脳の役割を果たすCosmos Reasonは、人からの明確ではない命令に対して事前の知識や物理原則を基にステップバイステップで実行できる行動計画に変換し、新たな状況に対応したり、さまざまなタスクを一般化したりすることを可能にする。
なお、NVIDIA Isaac GR00TとCosmos ReasonもNewton Physics Engineと同様にオープンソースソフトウェアであり、HuggingFaceからダウンロードしてロボット開発に利用できる。
また、Cosmos Reasonのベースとなる世界基盤モデル(WFM:World Foundation Models)の「NVIDIA Cosmos」についても、新機能として「Cosmos Predict 2.5」と「Cosmos Transfer 2.5」を間もなく提供する予定である。
Cosmos Predictはマルチモーダル入力からの連続動画生成によって状態予測を行うモデルである。Cosmos Predict 2.5では、最大30秒の動画作成とマルチビューカメラ出力が可能になった。Cosmos Transferは、ロボットの周囲のさまざまな環境や照明の条件を変えて行ったシミュレーション結果から動画生成やデータ拡張などの変換を行える。Cosmos Transfer 2.5は、従来モデルよりも高速かつ高品質な結果を提供できる一方で、モデルサイズは3.5分の1に縮小されているという。
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