130人の声が示すPLCの“現在地” 製造現場が抱える課題、期待を分析PLCの現在 過去 未来(2)(2/5 ページ)

» 2025年09月11日 08時00分 公開
[岡実MONOist]

現場が直面する、根深い「3つの壁」

 「PLCに関する悩み・課題」を尋ねたところ(図5)、現場が直面する根深い課題が浮かび上がってきました。「人」「技術」「メーカー」という3つの壁です。

図5 PLCに関する悩み・課題(Q6)の全体像 図5 PLCに関する悩み・課題(Q6)の全体像[クリックで拡大]

人の壁:「匠の技」の属人化と、担い手不足の現実

 最も多くの声が上がったのは「他人が書いたプログラムが分かりづらい」(93人)、次に「プログラマーの人手不足」(46人)が続きます。

 これは、少子高齢化を背景とした労働人口の減少という社会全体の課題を、製造現場が深刻に受けていることの表れといえるでしょう。長年、OJT中心で受け継がれてきた制御技術の継承が、熟練技術者の高齢化や人材の流動化によって限界に近づき、さらに独自の文化を持つラダー言語がIT分野からの新たな人材確保の障壁となっているという、二重の課題が、現場の切実な声につながっているのでしょう。

「昔ながら(といったら失礼になるが)のラダープログラムを扱えるエンジニアが減ってきており、メンテナンスに困っているという声をよく聞きます」

「属人化、人手不足の課題が大きい。海外の最先端機器などを扱えるようにキャッチアップし続けられるエンジニアが少ない or 教育を標準化する環境ないし組織がほぼない」

(自由記述より抜粋、以下同)

技術の壁:レガシー資産と、新技術のはざ間で

 「新技術への対応(IoT、AIなど)」(39人)と「保守・トラブル対応」(42人)も、多く指摘されています。古い資産を守りながら、新しい技術に適応していくことの難しさがうかがえます。

 日々の安定稼働を最優先する製造現場では、実績のある古い設備を長く使い続けるのが一般的です。その結果、新しい技術を導入しようにも、既存の古いプロトコルやPLCとの連携が足かせとなり、思うように進まないジレンマがあるのでしょう。

「変化を嫌う一部の人間が延々と古いモデルを使いたがるのが困る」

「フィールドバス多すぎ問題。IoTをやろうとしたときのプロトコル変換が面倒」

「最終ユーザーとして、いまだに新設設備のPLCが最新のPLCでない現状に危機感を覚えます」

メーカーの壁:日々の業務を縛る「囲い込み」への不満

 前編で見たように、標準化の動きは進んできました。しかし、現場の声は、今なお根強い「壁」に対する不満を訴えています。

「ベンダーロックが非常に邪魔」

「PLCやPLCとの連携機器など、もっとオープンになってほしい。現在が囲い込み戦略すぎる」

「ベッコフ以外のメーカーが開発環境を有償にしているのは課題と思います。せめて商用利用以外は無償にした方が良いかと思っています」

 筆者もPLCメーカーにいた一人として、この問題は非常に悩ましく感じます。メーカー側からすれば、独自の機能や使いやすさを追求し、自社製品を選び続けてもらうことで事業が継続でき、手厚いサポートが提供できています。

 一方で、ユーザーの立場から見れば、その「囲い込み」がメーカーごとの縦割り状態を生み、日々の業務における非効率や、プロジェクトに最適な機器を自由に選べないというストレスの原因となっている。このジレンマが、現場の根強い不満につながっているようです。

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