東芝は「IIFES 2025」において、NTTとの協力で実証を進めている遠隔での製造ライン制御のデモを披露した。NTTのIOWN APNと東芝のクラウド型PLC技術などを活用し、制御周期20ms以内の遠隔制御を実現する。
東芝は「IIFES 2025」(2025年11月19〜21日、東京ビッグサイト)において、NTTとの協力で実証を進めている遠隔での製造ライン制御のデモを披露した。NTTのIOWN APN(All Photonics Network)と東芝のクラウド型PLC(Programmable Logic Controller)技術などを活用し、制御周期20ms以内の遠隔制御を実現する。
今回IIFESで披露したのは、会場である東京ビッグサイトと約23km離れたNTT武蔵野研究開発センタを結び、東京ビッグサイト側にあるクラウド型PLCからNTT武蔵野研究開発センタ側にある製造ラインの制御を行った。
まず、製造ラインに設置されたカメラの画像をデータセンターに送信して画像判定を行い、その判定結果を基に東京ビッグサイトに設置された産業用コンピュータに通知し、このコンピュータからの制御指令でNTT武蔵野研究開発センタ側の製造ラインを制御し、合否判定に合わせてワークをより分ける。
IIFES 2025で披露した製造ラインの遠隔制御デモの様子。ベルトコンベヤーで流れてくるワークをカメラで撮影し、クラウド上で合否判定し、東京ビッグサイトにある産業用コンピュータの制御指令をリアルタイムで反映している[クリックで拡大]汎用のインターネット回線で制御を行う場合は、制御周期は100ms〜1sだが、IOWN APNを活用することで、今回のデモでは20ms以下を実現している。タイミングによっては10ms近くまで出ている時もあった。「モーション制御などよりシビアな条件では難しい場面もあるが、インラインでも多くの場面で使えるレベルになっている」(担当者)。
これらの技術は、NTTのIOWN(アイオン)構想の中核技術であるIOWN APNと「RDMAアクセラレーション技術」、東芝が開発したクラウド型PLCである「Meister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1」を活用して実現している。
IOWN APNは、端末からネットワークに全て光ベースの技術を導入し、現在の電子ベースの技術では困難な低消費電力、高速大容量、低遅延の通信を可能とした技術だ。RDMAアクセラレーション技術は、短距離での大容量低遅延データ転送が可能なRDMA通信に対し、転送性能を維持したままAPNを介した中長距離へ延伸することを可能にする技術である。また、東芝のMeister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1は、制御機能にあたる「制御コア」をクラウド上に実装する仕組みなどで、現地で行われていたPLCによる制御系システムの構築やメンテナンス作業をクラウド上で完結可能な技術である。
この仕組みを使い、東芝とNTTによる共同実証では約300km(光ファイバードラムを活用し仮想的に)離れた拠点から制御周期20ms以内の遠隔制御と4fps(250ms)でのAI外観検査を達成できたという。「技術的には、遠隔でのリアルタイム制御が可能であることを示せた。これらを活用することで、制御システムの構築やメンテナンスの遠隔化が実現できる他、1カ所からの複数工場の制御システム構築なども可能となる。2027年度以降の実用化を目指す」(担当者)。
約300km遠隔の制御周期20msとAI検査を達成、IOWNとクラウドPLCで
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