さらに、2024年度に一定の成果を残したのが「削減貢献量」の浸透に向けた取り組みだ。削減貢献量とは、パナソニックグループの製品やサービスが「ある場合」と「ない場合」を比較したときに、社会への影響の差異がどれくらいあるかを推計するものだ。「想定」が入るために基準に振れ幅があり、定義をどうするかで国際的に議論が進められている。ただ、企業にとっては省エネを含む環境に良い製品やサービスを生み出す動機になるため、パナソニックHDを含め複数の日本企業が積極的に標準化を推進している。
パナソニックHDでは、今回のサステナビリティデータブックから、WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)やGXリーグのガイダンスに準拠した代表事例を自主開示している。さらに、IEC(国際電気標準会議)による国際規格化を推進している。「2024年度に削減貢献量を開示した企業は世界で122社となり、定着が進んでいる。国際規格化についても、IECでは既にファイナルドラフトまでは進んでおり、2025年内に発行される見込みだ」(園田氏)。
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)における情報開示に向けた取り組みも今回から開始した。TNFDは、企業が自然資本と関わるリスクや機会を把握し、影響を財務的な視点で情報開示する国際的な枠組みだ。どの自然資本に依存してビジネスをしているのかという点などのリスクを解き明かすとともに、こうした仕組みを可視化することで、保全に向けた資金の循環を後押しするものとなっている。
パナソニックHDでは、LEAP(Locate、Evaluate、Assess、Prepare)アプローチにより、グループ全事業における自然資本に関連するリスクと機会を定量的、定性的に評価し、まずヒートマップで見える化した。その結果「多くの事業セグメントで水資源への依存度が高いことが分かった。製造工程も組み立て型が中心で資源を大量に使うビジネスモデルではないが、サーキュラーエコノミーと関連させながら、どのように示していくか検討する」と奥長氏は語っている。
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