パナソニックHD、“もうかる環境”に向け削減貢献量や資源循環の金額価値を提案脱炭素(1/3 ページ)

パナソニック ホールディングスは、「統合報告書」「サステナビリティサイト」「サステナビリティ データブック」の公開に合わせ、環境対策について一部報道陣の合同取材に応じた。

» 2025年09月03日 06時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2025年8月28日、「統合報告書」「サステナビリティサイト」「サステナビリティ データブック」の最新版を公開した。これに合わせ、環境対策について、一部報道陣の合同取材に応じた。

2050年までの環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」実現へ

 パナソニックHDでは「サステナビリティ経営委員会」の委員長をグループCEOの楠見雄規氏が務めるなど、サステナビリティ経営に力を入れている。2022年には、グループ全体の環境ビジョンとして「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」を発表し、自社のバリューチェーンのCO2排出量を1.1億トン、社会の排出量削減貢献量で約1億トン、新技術や新事業による社会への排出量を1億トン削減する目標を掲げている。

photo Panasonic GREEN IMPACTの概要[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 さらに、それを具体的に推進するために2030年までのマイルストーンとして環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN(GIP)」を設定し、具体的な実現に向けた数値目標とその進捗管理を行っている。2030年には自社排出のゼロ化達成に加え、約1億トンの削減貢献を目標とし、まずは2024年度までの3カ年でCO2排出量削減や資源循環についての数値目標達成を目指した。2025年度は、「GIP2024+1」として現在のKPI項目を生かした新たな目標を追加している。

photo 環境行動計画「GIP2024」の実績と2025年度の目標[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

CO2排出量は増加傾向だが、同一対象では目標通りの削減

photo パナソニック オペレーショナルエクセレンス 品質・環境本部 部長の園田圭一郎氏

 GIPの2024年度の実績を見ると、自社バリューチェーンでのCO2排出量の削減については目標未達となった。目標では1634万トンの削減を目指していたが、実際には3811万トン増加したという。

 これに対しパナソニック オペレーショナルエクセレンス 品質・環境本部 部長の園田圭一郎氏は「実質的にはCO2排出量は増加してしまったことになるが、これは各種規制や国際会議での議論などを通じ、CO2排出量の計算に加える対象範囲が増えたことが大きな要因だ。同じ対象範囲で比較した場合、1901万トンの削減となる」と説明する。

 実際に「GHGプロトコル」のスコープ1、スコープ2の領域ではCO2排出量削減が順調に進んでいる。CO2排出量実質ゼロとなる工場は2024年度までに37拠点で実現する目標だったが、45拠点で達成した。CO2排出量も26万トンの削減目標に対し、83万トンの削減を実現している。

photo CO2実質ゼロ工場の動向[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 例えば、マレーシアのエアコン工場(パナソニックAPエアコンマレーシア)では、太陽光パネル9461枚を設置し、発電容量5.2MW規模の太陽光発電システムを導入した。これにより年間発電量は約5900MWhとなり、同拠点の使用電力量の20%を賄うという。CO2排出量は年間3912トン削減できる見込みだ。

 水素を活用したエネルギーソリューションである「Panasonic HX」の海外展開も本格化している。Panasonic HXは、純水素型燃料電池と太陽電池、蓄電池を高度なエネルギーマネジメントシステムで連携制御するエネルギーソリューションだ。草津工場の一部で導入した後、2024年12月には英国ウェールズのパナソニックマニュファクチャリングイギリスに導入し、電子レンジ組立工場の電力を再生可能エネルギーで賄うことに成功した。また、2025年1月にはドイツ・ミュンヘンのオフィスビルにも導入しており、積極的な実証運用に取り組んでいる。

photo 草津工場に設置された「H2 KIBOU FIELD」[クリックで拡大]
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.